読んでたのしい、当たってうれしい。

現在
45プレゼント

郡内織の伝統技×最新のデジタル技術 木漏れ日感じる無二の傘

槙田商店 晴雨兼用日傘「こもれび」

こもれび

晴雨兼用日傘「こもれび」長傘(スライドショート)

 

 

 傘を広げると、高原の木々の緑を通った木漏れ日と枝葉の影が、色を変えていく様を実際に見ているかのよう……。まるで写実絵画のような傘地は、プリントされたものではなく、織られたものです。富士山のふもと、山梨県西桂町にある老舗生地メーカー「槙田商店」が手がけるオリジナル傘「こもれび」。県産業技術センターと山梨大学が共同開発した特許技術を使い、織物でありながら、滑らかなグラデーションを実現しました。 

 

甲斐絹を高密度に織る伝統技が発展 さらなる進化

 槙田商店のある一帯は400年の歴史がある「甲斐絹」の産地で、極細の絹糸を高密度に織る先染めの薄手の布は「郡内織(ぐんないおり)」と呼ばれています。明治期、柄物が織れる「ジャカード織機」が導入されたことで、郡内織は飛躍的に技術が向上。水を通しにくい郡内織の特性を生かした傘地の産地となり、戦後は化繊の洋傘地作りが盛んになりました。
 
 このジャカード織物をさらに進化させるべく、県産業技術センター富士技術支援センターと山梨大学が2015~17年の研究で開発したのが、織物でグラデーションを表現する特許技術です。写真そっくりに織れる「デジタルジャカード」技術を応用して、より魅力的な商品作りに生かす方法を追求したといいます。
 
 ジャカード織の柄は、経(たて)糸に緯(よこ)糸を交差させてできる面で描く、いわばドット絵のようなもの。デザイン通りの色柄を再現するため、何色もの糸の組み合わせを指示するデータを人の手で練り上げ、織機に送ります。
 
 極細糸高密度の郡内織は、1ミリ四方の中に経糸が8本、緯糸が4~5本織り込まれる緻密さ。たとえば直径84センチの傘に使う100×140センチの布全体に、極小の点でグラデーションを描く指示データを作るとすると、手作業では約1カ月を要するところ、デジタルジャカード技術を使えばわずか1日で完了できるそう。しかも人の手では完全再現不可能な、より細かく滑らかな表現が可能になったといいます。

データ入力

織機に送られるデータ作り。このデータで経糸を動かす

 

1万2千本の経糸が織りなす 八ケ岳の風景

 研究のため、実際に布を織って協力したのが創業160年の槙田商店でした。強みは1万2千本もの経糸を自在に操る高機能電子ジャカード織機です。
 
 一般的な傘のジャカード織は、ストライプなど単純な連続柄が主流ですが、槙田商店では、この高機能織機と長年蓄積した技術で、複雑な絵柄も織ることができます。これまで欧州の一流ライセンスブランドの高級傘地を何社も手がけてきたほか、傘地にとどまらず、「イッセイ ミヤケ」からの発注で服地も開発・生産するなど実績は十分。高度なグラデーションを形にするのに、最適なパートナーだったわけです。
 
 県産業技術センターが、プロトタイプ作りの際に提案したのが「山梨の自然を表現した柄」。いざ、完成した特許技術をいかした新商品作りに取り組むことになった時、槙田商店社長の槙田洋一さん(46)の脳裏に浮かんだのが、俳優の故柳生博さんが八ケ岳山麓に開いたギャラリー&レストラン「八ケ岳倶楽部」からの相談でした。
 
 傘職人を抱えて傘作りの下請けもしていた槙田商店は、2010年から柄織りのオリジナル傘作りを本格化。八ケ岳倶楽部で販売会を開いた縁で、柳生さんから直々に「八ケ岳の雰囲気を表現した、うちらしい傘が欲しい」とお願いされていました。
 
 八ケ岳の雑木林にゆれる「木漏れ日の風景」と、繊細な色彩変化を織りで再現する「特許技術」。二つが結びつき、八ケ岳のブナやカエデをモチーフにした傘「こもれび」が誕生したのです。

織機

1万2千本もの経糸がデータの指示で複雑に動き、模様をつくりだす

 

柳生博さんも驚いた 流れる光の表現

 「こもれび」の傘地は、経糸1色、緯糸1色のたった2色しか使っていません。雑木林の光とそれが映し出す枝葉の影の繊細な描写を、2色で作るグラデーションの濃淡だけで表現したというから驚きです。布地を実際に傘に張ると、さらなる驚きの効果が。傘の曲面に光が反射することで色彩がうつろい、まるでホログラムのような立体感が出るのです。ゆっくり傘を回すと、まるで陰影が流れているようにも見えます(動画があるサイト)。傘ができあがった時のことを振り返り、槙田さんは「本当にびっくりした」といいます。「糸が立体的に交差する織物ならではの効果で、プリントでは出せないと思います。郡内織にぴったりの技術でした」
 
 完成した傘を見た柳生さんは、「こんな風に自然の木漏れ日をリアルに表現できるとは」と感心しきりだったそう。特許技術の発表会で使う写真のモデルを、自ら買って出たほどでした。
 
 「こもれび」は1万6500円と決して安くはありませんが、発売以来、高い人気を誇っています。買った人からは「実物を見て驚いた。こんな傘は見たことがない」と驚きの声が寄せられているそうです。オンラインショップのHPを見た訪日外国人から「どこで売っているのか」と問い合わせが来たこともあったといいます。

柳生博さん

「こもれび」を手にする柳生博さん。光の表現に感心していた(「八ケ岳倶楽部」撮影)

 

服地と傘地の技術を融合 どこにもない傘を

 槙田商店がオリジナル傘作りを始めた背景には、安価な海外製品の台頭と、ライセンスブランドの受託生産減少という危機感がありました。槙田さんは「傘地や服地などの様々な織物で培った技術を生かした商品を、自分たちの名前で打ち出していきたい」という思いが強くなったといいます。
 
 それを体現したのが2013年に発売した傘「1866」です。槙田商店のなかでも高度で最上級の技術を見せる「魅せる傘」を作ろうと企画がスタート。内側にも布を張る「蛙張り」という技術を用いて、外側には先染めがもたらす色の奥行感が美しい高密度のシャンブレー、内側はボンボンなど織りのテクニックを味わえる生地と、傘をさす人の目をも楽しませる二重張り構造の傘にしました。創業年をその名に冠したこの傘は、3万円超という高価格ながら、百貨店の催事では2週間で8本が売れました。「いいものを作って、その背景まで伝われば高額でも選んでもらえる、と自信がついた傘です」と槙田さん。

1866

(左)蛙張りの傘「1866」         (右)内側には目にも楽しいポンポンが

 東京造形大学の卒業生を社員に採用し、デザインを任せた日傘が「やまなし産業大賞優秀賞」を受賞するなど、槙田商店の傘作りは新たな取り組みを重ねてきました。子供服ブランド「フランキーグロウ」とのコラボや、スウェーデンが誇る北欧デザインの巨匠、スティグ・リンドベリの細密なプリント柄を織物で再現して傘にするなど、創作の幅は広がり続けています。

ほかの傘

(左)「やまなし産業大賞優秀賞」の日傘「菜」(中)北欧デザイナーコラボ「Stig L.」(右)傘とおそろいのサブバッグ

 創意工夫がつまった布地を、傘だけでなく、エコバッグやポーチなどの小物にも展開しています。槙田さんの今後の目標は、工場に隣接した直売所を新たに作ること。「自分たちの技術や物作りのストーリーを直接伝えられる場が欲しいんです」

 


 

槙田商店

 創業は1866年。戦後、化繊の洋傘地生産を始める。高性能の電子ジャカード織機を導入し、パリコレクションブランドなどの服地の生産も。古くから傘職人を抱え、傘地製造から傘の組み立てまで一環して手がけている。2010年からオリジナル傘の直販を始め、オンラインショップを開設。傘は現地でも購入可。

オンラインショップ

ACCESS 山梨県南都留郡西桂町小沼1717
 

\ クイズに答えて晴雨兼用日傘を手に入れよう /

槙田商店の「こもれび」折りたたみ傘を
抽選でプレゼントします。

「こもれび」 ブナ 折りたたみ傘

応募締切:2026年6月15日 16時