
千葉県名産、ピーナツの形をした最中種にピーナツ風味の餡(あん)が入った和菓子「ぴーなっつ最中」は、千葉土産の定番として広く知られています。作っているのは、「なごみの米屋」。成田山新勝寺の表参道に總本店を置く老舗企業です。
そのなごみの米屋が、人気銘菓のみるく饅頭「なごみるく」をさらにおいしくリニューアルし、今年2月から販売しています。
なごみるくの誕生は2019年4月。創業120年の記念菓として開発されましたが、翌年リニューアルし、今回は2回目になります。「もっとおいしくしたい」。そんな思いで7年以上にわたり開発を続けてきました。
なごみの米屋の創業は1899(明治32)年です。成田山新勝寺に伝わる「栗羹(くりかん)」という精進料理をヒントに、「栗羊羹」を初めて作り、成田山参詣土産として販売したのが最初です。日本で初めて販売した栗羊羹は門前町の様々な店で作るようになり、成田山の名物になりました。
創業120年のお菓子のテーマは「笑顔をつなぐお菓子」。創業当時からの看板商品の栗羊羹は、購入層の年齢はやや高めと限られていました。そこで候補にあがったのが、みるく饅頭です。
みるく饅頭は、バター入りの生地で千葉県産牛乳を使った餡(あん)を包み、しっとり柔らかく焼き上げたお菓子。マーケティング部部長、多田直史さんは「お子様からご年配の方まで、みんなをつなげるお菓子」と話します。「全国各地に同じような商品がたくさんあり、それだけみなさんがお好きだと思いました」
2019年4月1日、みるく饅頭「なごみるく」は発売されました。
しかし発売後も開発は続きます。「創立記念を目指して作っていった各工程で、まだいろんな可能性を秘めている、ということが分かったんですよね」と多田さん。「もっとおいしくできるんなら、じゃあもう次の年もやろう、と」。
今回のリニューアルについては「とにかく一般の方の意見を重視しました」。従来の商品開発のモニターアンケートは社内や売り場の人にお願いすることはあったものの、ここまで徹底しようと決めたのは初めてでした。
意見を聞くために用意したのは、自社で発売中のなごみるくと開発中の試作品に加え、多田さんが「すごく大きい壁」と話す全国的に有名なみるく饅頭2種。どの商品かをまったくわからないようにしたブラインドテストを実施しました。最初の評価で、他社に負けている項目が多かったそうですが、「現状はしっかり受け止めました」。
その評価を覆すために、どういうことをしていくか。試作担当として関わったのが、研究開発部試作研究課長の倉澤亜紀さんです。「今回のテーマははっきりと決まっていました。口溶け感、ミルク感、一体感。そのために一つずつどこを変えていけばクリアできるのかを検討しました」
試作は100回以上。「乳製品は扱いがすごく難しくて」と倉澤さん。加熱が必要な乳製品はたくさん入れればミルク感は上がるものの入れすぎると硬くなります。豊富にある乳製品の中から適したものを探し、乳製品を入れるタイミングは工程の後半に入れるようにするなどをして、風味は残るけれども柔らかく口溶けよく仕上げることを目指しました。
試作品がある程度仕上がってきたら、次は製造部の出番。試作品がどんなにうまくできていても、工場で大量に生産できないと販売できません。それが、係長の木内幹太さんがいう「いつなんどき、どんな時も同じ商品を作るのが自分たち製造部のプライド」です。
工場内は一定温度に保たれていても、豆の種類によって水分量が異なり、季節によって変わることもあります。「夏場は温かい状態で入ってくる素材も冬場だったら冷たい。だから煮る時間を調整する必要があるんです」と話します。
餡を包む生地が薄いと、両方が一緒にすっと同じようにかめるようになり、一体感が生まれます。この餡を生地で包む作業が包餡で、「薄くきれいに均一に包むのは難しい」と木内さん。薄さを追求しすぎると崩れやすくなってしまうからです。「製造現場で試してみて、これぐらいなら安定的にできそう!って思ったら、テストに回したりしていました」
試作とテストを繰り返し、少しずつ他社の評価を上回る結果を残していけるようになりました。
圧倒的に変わったと評価を受けたのが口溶け感。口に含んだ後の生地や餡のほぐれ方でした。ミルク感は「これまでの商品はふわっと牛乳を感じてそのまますっと消えていったイメージでしたが、それがしっかりと残るようになりました」と多田さん。一体感については生地と餡で適切な水分量が異なる中、一緒に食べたときに二つの素材が、もっともおいしく食べられる堅さになる水分量を探していったといいます。
完成の手応えを感じた多田さんは、最終的に商品発売を決める会議で、諸岡良和社長に進言しました。「社長、もう発売してもいいんじゃないでしょうか」。しかし社長の答えはNO。「圧倒的な差を付けるぐらいじゃないと、と求められました」。
より完成度を高めた結果、発売が半年ほど遅れることになりました。
今回のリニューアルでは、パッケージも一新、なごみるくでは同社で初めて焼菓子にアルミを蒸着したフィルムを採用しました。狙いは品質向上と賞味期限を延ばすこと。多田さんは「ご進物にするとき、差し上げた方を急かすことなく安心して食べられるような賞味期限設定も重要だと分かっていました」。
ピンクを基調としたパッケージは、美味しいものを食べて笑顔になったときの頬の紅潮やあたたかみ、ほんわかとした雰囲気を表現。繋がった文字で、人と人・心と心を結び、伝統から革新へとつなげてゆく心意気を表した
合わせて、贈る先の人数や価格帯に細やかに対応できるように詰め合わせ数を、4、6、9、12、18、27、36と七つに設定しています。
なごみるくの開発を振り返り、「会社のすべてが一つの方向を目指していた」と多田さん。
倉澤さんは「本当にこの商品は、全社一丸となって、みんなで作り上げたっていう感じがします」と振り返り、木内さんは「いいものをつくろうっていうことに、かなり専念してやらせてもらえたって感じがします」と話します。
「大変なことはいっぱいあったけど、やりきれたって感じです」
ピンクが基調のパッケージは、うれしいときやおいしいモノを食べたときの頰の色や温かみを表現しています。
また、そんなみんなの笑顔をつなぐなごみるくの一筆書きは、人と人・心と心を結び、結婚するカップルや両家をつなぐお菓子として、引き出物としてのご利用もあるそうです。


