

特紡糸といいます。愛知県の三河地方はもともと繊維産業が盛んな地域で、リサイクル繊維の産地でもあるんです。紡績は原料の短い繊維をそろえてのばし、撚(よ)って1本の長い糸にする作業のことですが、糸を紡ぐ時に、どうしてもくずがでてしまいます。
さらに、紡績の原料である短い繊維の製造工程でも「B格」とされる規格外の繊維くずが発生します。それらを集めて紡ぎ直し、新しい糸として再利用するのです。この糸を特紡糸といい、私たちが使う特紡糸は、リサイクル原料から作られるために太かったり細かったりと不均一。ファッション用途には向きません。でも三河は昔から「もったいない」の精神が強く、軍手やモップに活用してきました。
しかし、いくらB格の素材から作ったからといって「安かろう、悪かろう」ではいけません。人の知恵と技術で紡ぐことで、大量生産された糸とは異なる独特な風合いが生まれます。私たちは、B格という言葉を前向きに再定義しているのです。

特紡糸が絶滅の危機にあります。工場の海外移転などで、材料自体が少なくなったことに加え、後継者不足の問題もあります。しかしそれとは別に、そもそもこの産業の価値が見い出されていないのでは感じていました。そこで、今まで培った技術を生かして、使い捨てでなく、「愛着がわく軍手」を作ろうと考えたのです。地元デザイナーと組み、売れるためのデザインや付加価値を考え直しました。
形については、デザイナーから「形は機能的に完成されているので変えないほうがよい」と助言があり、色展開を増やしました。機能面では特紡糸に加えてポリウレタンを一緒に編み込み、フィット感を高めています。伸縮するのでブカブカになりにくく、ずれにくいんです。
また、一般的な薄手の軍手より肉厚のため、強度があり洗濯しても問題なく繰り返し使えます。密度が高いので暖かさもあります。
「カラーネップ」という色の粒を糸に混ぜました。見た目の変化が狙いですが、たとえばネイビーは星空のように見えてかわいいですよ。

昨年10月に販売して、中川政七商店さんが主催する「地産地匠アワード2025」で優秀賞を受賞したことなども追い風になり、売れ行きは想定以上です。作業や園芸の用途のほか、冬の防寒具やクリスマスなどのギフトとしても人気で、色違いでご家族分に、といったケースもあります。
Mサイズのみ、袖口が通常より8センチ長い「ロングカフス」を展開しています。袖を一緒にしまい込んで防寒ができるのと、肌を保護できる範囲が広いので好評です。
一昨年、以前使っていた糸の紡績工場が廃業しました。幸い、同地域の別工場で同じ原料を用いることができ、見た目の近い糸づくりの段取りがつきました。コストは上がったものの、新しい工場は30代の後継者もおり、当面は連携して継続できる見込みです。三河の地場産業を守っていくために、原料、紡績、企画など地域内の役割が連携し、互いに理解し合って発信できる体制づくりが大切だと考えています。そして、倉敷デニムのように「良い軍手といえば三河」と認知されることを目指しています。

