

三十数年前、当時専務だった中川みよ子さんが 店の企画展の演出で蚊帳を使ったのが始まりです。そこで蚊帳生地の肌触りのよさと美しさを再認識したそうです。
奈良は蚊帳の一大産地でしたが、網戸やエアコンの普及で廃れつつありました。弊社が享保元年(1716年)に高級麻織物「奈良晒」の卸問屋として創業して以来、布を生業としてきたこともあり、蚊帳業界の苦境を耳にして「生地の作り手の技をなんとか残したい」と考えたといいます。
夏に使う蚊帳の生地は、虫を避けつつ風を通す目が粗くて薄いものです。主婦業もしていた中川専務の経験から、その吸水性と速乾性に着目し、ふきんにできないかと思いついたそう。それも、日々使うキッチンを彩る華やかなふきんがいいと、白ではなく、花をイメージした色に染めた「花ふきん」が、1995年に誕生したのです。

大きさは一般的なふきんの4倍ほど大きい 約58センチ角あります。これは反物の幅をちょうど半分にした大きさです。布の商いをしている会社として残布を出さない工夫でしたが、機能的にも理にかなっています。
目が粗くて薄い生地は、折り畳んで使うことで吸水量が増します。そして広げて干せば速く乾く。「かや織」のポテンシャルを十分生かした仕様なんです。しかも洗えば洗うだけふわっふわになって、さらに吸水性も増します。
風合いの良さに手放せなくなって、最後に雑巾にするまで長く使う愛用者が多いんです。結婚する子どもに持たせる、というお声もよく聞きます。

中川政七商店は「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げていますが 、花ふきんはそのビジョンを打ち出す前に生まれた商品。昔からある技術や手仕事を活かしてアップデートしていく、という社のものづくりの考え方を体現しているような商品です。
2008年度にグッドデザイン賞金賞を受賞した際は、伝統産業の蚊帳を生かした発想と機能が評価されました。2022年度のグッドデザイン・ロングライフデザイン賞では、それに加えて長年にわたり使い手の支持を得ている点を評価されました。伝統の物作りを大事にする姿勢が、お客様の「長く使いたい」につながったのは、うれしいことです。
これまで約488万枚売れたロングセラーですが、年々少しずつ変化しています。昨年は30周年を記念して、インクジェットで細かな印刷を施し、実用性だけでなく、花を生けているかのような「みせる」 ふきんを作りました。今後も毎年8月7日の「花ふきんの日」の時期には新しい挑戦をするつもりです。長く使えて、より暮らしが楽しくなるふきんを作っていきたいですね。



【綿】
(上段)白百合、檜扇、水仙、柳
(下段左から)竜胆、小手毬
綿100%/かや織2枚重ね
約58×58cm(パッケージ約17×17cm)
各880円
