

25年ほど前に発売した「焼き焼きグリルシリーズ」の中でも、一番初めに生まれたのがこの「ぽっちゃり」でした。
鉄器といえば、お肉を焼くステーキ皿というイメージがありましたが、お魚をおいしく焼けるグリルプレートを作ろうと。
日本の食卓に合うように和の雰囲気を意識し、陶器のような布目模様をデザインしました。
知り合いの料理研究家の先生から「魚焼きグリルって実はすごくいい熱源なのに、日本人はあまり使いこなせていない」という話を聞き、グリルにそのまま入れられるようにしました。滑らないよう後ろにストッパーをつけ、ハンドルを外して熱々なまま食卓に出せるようにしたのも、その流れです。
先生に使っていただいたら、朝ごはんのサケがすごくおいしく焼けるという話になって、グリルの中も汚れず、器になる便利さもあり、かなり使い勝手のいい道具だと思います。
最初は家庭用として広がりましたが、料理人の方や料理研究家の方が使ってくださるようになり、テレビや雑誌にも自然に出るようになりました。
25年続いている理由としては、一度使った方が「よかったよ」とギフトにしてくださったり、店舗に友達を連れてきてくださったり、そういう広がり方をしているのが大きいと思います。
重すぎないし、乗せて焼くだけでいい。料理初心者の方にも、最初の一つとしておすすめできる道具です。

サケやホッケなどの魚をはじめ、ズッキーニなどの夏野菜、他にも幅広い食材がおいしく調理できます。なかでもサケはおすすめですね。
魚って、しっかりした切り身もあれば、サンマみたいに皮が薄くて崩れやすいものもありますよね。でも、どちらもポイントはしっかり温めてから魚を置くことです。
まず「焼き焼きグリル」を魚焼きグリルの中に入れて空焚きし、鉄器が熱くなったところに薄く油を引いて魚を置くと、焼けたときに気持ちよく剥がれてくれます。鉄器自体がしっかり熱を持つので、上火だけのグリルでも下からちゃんと火が入ります。
魚をひっくり返す手間がないし、身崩れの心配もないんです。
また、魚だけじゃなくて野菜を一緒に焼くのもおすすめです。サケならアスパラガスとかミニトマトを添えるだけで彩りが良くなりますし、そのまま食卓に出すと、一品料理みたいになります。
グリルの中で調理できるので、夏場のキッチンがあまり暑くならないのも嬉しいですね。

今は、環境への意識を持ち、長く使えるものに価値を感じている若い方が増えているような気がします。特に東日本大震災以降、その意識は強くなったんじゃないかと思っています。
震災の時には、流されたプラスチックごみが海に浮いて遠くまで流れ着いた、という話もありました。でも鉄器は、漂ってゴミになるものではなく、海に沈み、自然に還っていく素材でもあるんです。
実際、津波で流された鉄瓶や「焼き焼きグリル」を、「これは絶対私のだから、直してください」と持って来られた方もいらっしゃいました。真っ赤に錆びていても、また使いたいと思っていただける。鉄器って、そういう道具なんだなと、私自身すごく感じました。
昔は、南部鉄器って古い道具というイメージもあったと思います。でも今は、「100年使える」とか、「捨てない道具」という価値に共感してくださる方が増えている気がします。便利なだけではなく、暮らしに寄り添いながら長く使い続けられる。
そういうところが、今あらためて南部鉄器の魅力として見直されているのかなと思っています。




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