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河瀨直美監督を審査員長に迎え、2017年に発表された第1回木下グループ新人監督賞で、241本の中から栄えあるグランプリに選ばれた作品『AWAKE』。本作は、2015年に実際に行われ、当時、ネットユーザーや将棋ファンの間でかなりの物議を醸した棋士VSコンピュータの対局に着想を得て、山田篤宏監督が書き下ろした完全オリジナルストーリー。吉沢亮演じる天才に敗れ棋士になる夢をあきらめた主人公が冴えない大学生活を送っていたある日、ふとしたことで出会ったAI将棋のプログラミングに新たな夢を見出し、かつてのライバルと再戦を果たす青春物語である。
藤井聡太二冠がけん引する将棋ブームに沸く昨今。そして、11月17日は「将棋の日」。日本将棋連盟が1975年に制定したもので、江戸時代中期から御城将棋が11月17日(旧暦)に行われていたことが由来とされている。その将棋の日にちなみ、知っている人も多い有名なものから、思わずニヤッとする少しマニアックなものまで、本編に散りばめられた将棋の小ネタを一部紹介。あわせて場面写真も解禁された。
●羽生善治の名言
ひたむきに将棋と向き合ってきたものの、棋士を目指して戦う重圧に苦しみ、始めたころの楽しさを上回り、徐々に精彩を欠いてきた英一(吉沢亮)を見て、藤村先生が言い放つ「努力したって報われる保証もない。でもね、努力し続けるのが本当の才能だよ」というセリフは、羽生善治九段の名言から引用されている。
降段がかかった大一番、同じ奨励会員でありライバルでもある陸(若葉竜也)との対局に英一が臨むシーンで、対局を見守る藤村先生の口からこのセリフが放たれるが勝負の行方は果たして・・・!?
●将棋ソフト【Bonanza】のソースコード公開
本編では2013年の出来事として描かれているが、実際にソースコードが公開されたのは2009年。このエピソードは山田監督が、コンピュータ将棋に革命をもたらした【Bonanza】へのリスペクトを込めて挿入した。
棋士の夢をあきらめた英一は、独創的な手を指すコンピュータ将棋にのめり込み、自ら将棋ソフト【AWAKE】を開発。“最強ランク”とも評されている将棋ソフトのソースコードが公開されたことにより、「【AWAKE】はさらに強くなる!」と、英一と磯野(落合モトキ)は将棋電王トーナメントの優勝を目指すことになる―。
●阿久津主税の名言
【AWAKE】との対局に名乗りを上げ、将棋ソフトの対策に没頭する陸が、「勝ちたいと思って対局に臨まない時が来たら、僕は棋士を辞めないといけないと思っています」と言うが、これは実際の電王戦FINALで阿久津主税八段がインタビュー時に答えた言葉を引用している。
かつてのライバルと、コンピュータVS棋士という図式で相まみえることになる英一と陸。最後に待ちうける、勝敗を越えた感動とは―!?
●スポーツニッポン 王将戦記念撮影
スポーツニッポン新聞社および毎日新聞社主催の将棋の棋戦でタイトル戦のひとつに王将戦がある。その王将戦の番ごとの勝者は、スポーツニッポンの紙面掲載用に記念撮影を行うのだが、パティシエに扮してロールケーキをつくったり、安来節を踊ったりとユニークな写真が多く、将棋ファンの間では王将戦の隠れた醍醐味として知られている。本編では、殿様の格好をした陸が載ったスポーツニッポンがちらりと登場する。ぜひ探してみてほしい。
●恐怖の赤ヘル少年
一九八〇年代はじめ、各地の将棋大会を席巻した「恐怖の赤ヘル少年」。人混みの中でも両親が見つけやすいようにと広島カープの帽子をかぶった、少年時代の羽生善治九段の伝説として語り継がれている。場面写真には、その「恐怖の赤ヘル少年」を彷彿とさせる後ろ姿が確認できる。この少年は一体何者で、どのようなシーンなのか・・・!?今はまだわからないが、夢中で将棋を指すその後ろ姿からは、将棋の本来の楽しさを感じさせる。
これまで紹介したものはごく一部で、他にも数々の将棋の小ネタが本編に散りばめられている。映画の1つの見どころとして、ぜひ劇場で探して楽しんでほしい。
12月25日、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。