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『大いなる自由』驚愕の本編オープニングシーン解禁!絶賛コメントも続々到着!

隠しカメラ映像を証拠に粛々と進む裁判…Bunkamura初配給作品

(C)2021FreibeuterFilm•Rohfilm Productions
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 2021年カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞受賞、2022年アカデミー賞 国際⻑編映画賞オーストリア代表作品『大いなる自由』より、本編オープニングシーン映像が解禁された。

 Bunkamura初の配給作品となる本作は、戦後ドイツで男性同性愛を禁ずる「刑法175条」のもと、「愛する自由」を求め続けた男の20余年にもわたる闘いを描いた、静かな衝撃作。1968年、西ドイツのある男子トイレに秘密裏に取り付けられた隠しカメラ。それに気づかず真っすぐレンズの方を見つめる若い男と、それを外から眺める中年の男ハンス。ふたりは人目を気にしながら同じ個室に入っていく。この様子を映写機で流すのは、ハンスを刑法175条違反で処罰するための裁判の場だ。粛々と審議は進められるが反論の機会を与えられることもなく、あっさり<執行猶予なしの懲役24か月>の判決がくだる。車で刑務所に連行され、入所の手続きを行うハンスはどこか淡々としていた……。

 終戦後の1945年、恋人と共に投獄された1957年、そして刑法改正が報じられた1968年という3つの時代を行き来しながら、決して愛する自由を諦めないハンスの闘いを描いていく本作は、時代の最後となる1968年から始まる。脚本も担当したセバスティアン・マイゼ監督は、「劇中に登場するような、隠しカメラでの監視はかつて実際に行われていました」と語る。


『大いなる自由』本編オープニングシーン

 ドイツを含むいくつかの国でかつてこうした映像が秘密裏に撮影され、監督がこうした隠しカメラの映像と出会ったのは、アメリカに公的記録として残されていたフィルムをもとに作られたあるインスタレーションだったという。その上で、「男性同士の恋愛が犯罪とされていたため、彼らはつかの間の出会いの場を作る必要があったのです。その中には、“クラッペ”と呼ばれる男性用公衆便所も含まれていて、風紀警察が知恵を絞り、熱心に探っていました。映像を見ると、“異常なのは撮る側と撮られる側のどちらなのか?”という疑問が湧いてきます。それらの映像を見たとき、これを映画の始まりにするべきだと思ったんです」 と解説し、こうした状況への疑問をにじませる。

 また、本作をいち早く鑑賞した各界トップランナー達から、映画を称賛するコメントが続々到着!12名のコメントも一挙解禁に。

 映画は、社会の中で居場所を見出せないハンスが、刑務所の中でも決して失うことのない数々の感情を描き出していく。王谷晶氏(小説家)は、「もうそれ以外には何も持っていないかのように、愛だけを抱えて生きるハンスが眩しい。」などとコメントし、木村和平氏(写真家)は「どこまでも正直に生きようとするハンスを抱擁しているようだった。」などとコメント。多和田葉子氏(作家・ドイツ在住 )は「ハンスが求めていたのは肌と肌、心と心が密着するような親密さだった。」などとコメント。オープニングシーンでも描かれる“外の世界”の余りに淡々としたシークエンスとはうって変わり、刑務所の中で繰り広げられるドラマの豊潤さを予感させる。

 本作のタイトル『大いなる自由』とは映画のクライマックスに登場するとある場所の名前で、観る者に”真の自由とは何か” を強烈に突き付けるシーンでもある。この場面について、岡田利規氏(演劇作家・小説家・チェルフィッチュ主宰)、カナイフユキ氏(イラストレーター)、マライ・メントライン氏(独、和翻訳家・TVプロデューサー)がそれぞれの言葉で言及。

 そのほか、折坂悠太氏(シンガーソングライター)、北村道子氏(スタイリスト)、小池昌代氏(詩人・作家)、須永辰緒氏(DJ ・音楽プロデューサー)、ミヤギフトシ氏(現代美術家)、藪前知子氏(東京都美術館学芸員・「山口小夜子」「石岡瑛子」展キュレーター)が熱のこもったコメントを寄せている。


王谷晶(小説家)
 もうそれ以外には何も持っていないかのように、愛だけを抱えて生きるハンスが眩しい。愛と欲望は人の心の中にあるものなのに、その外側の都合で繰り返し繰り返し押し潰される。それでも愛も欲望も壊れはしないのは、やはり人の心の中にあるものだから。

岡田利規(演劇作家・小説家・チェルフィッチュ主宰)
 この映画を見るあなたは主人公ホフマンを演じるフランツ・ロゴフスキの表情と佇まいに、冒頭から吸い込まれるように見入るだろう。そしてラストシーンでは陶然とするような、宇宙に放り出されるような経験を味わうだろう。

折坂悠太(シンガーソングライター)
 その肌に温もりを絶やさぬよう、誰かが灯した火。私のためでも、あなたのためでもない。例えを拒む、震える光。条件付きの「未来」を尻目に、またどこかでガラスが割れる。その目はいつも開いてる。

カナイフユキ(イラストレーター)
 「本当の自由とは何か」という問いを突きつけてくるようなラストシーンに、どう応答したら良いのか今もわかりません。監獄の光と闇の中で紡がれる、自由をあきらめることができなかった男のドラマを、これからの人生で何度も思い出しそうです。

北村道子(スタイリスト)
 それにしても、『青』の囚人服とおとこの裸体がこんなにもエロチックで美しいとは思わなかった。マッチの炎が一際おとこを妖しくさせるのはクリステル・フルニエの才能。

木村和平(写真家)
 あらゆる轟音が、無音のように感じられた。 その一方で、エンドロールの微かなホワイトノイズは最も大きな叫びとなり、どこまでも正直に生きようとするハンスを抱擁しているようだった。多彩な色温度の照明、そのすべてに存在意義があるように、だれの光も邪魔しない社会を願う。

小池昌代(詩人・作家)
 同性愛者ハンスの腕に黒黒と刻印された二重の入れ墨。同様の峻烈な痛みが胸に刻まれ跡を残す。透明で強靭な闇と、時折、開く光の窓。刑法175条の歴史。内と外の概念が逆転する。観た後、自分が変わる映画だ。

須永辰緒(DJ・音楽プロデューサー)
 ニルス・ペッター・モルヴェルの劇中に流れる不協和音のようなソロはマイルス(ディヴィス)の『処刑台のエレベーター』あるいは黎明期日本のフィルムノワールを想起させる。ラスト近くのフリー・ジャズの演奏がこの映画を物語る音像と想定されるならば、その命題とのパラドックスが監督の意図なんでしょう。

多和田葉子(作家・ドイツ在住)
 ハンスが求めていたのは肌と肌、心と心が密着するような親密さだった。同性愛禁法のせいで戦後も入獄を繰り返した彼が、監獄内で初めてロマンチックな愛や、深い信頼関係を知る。カメラはそんな彼を肌に触れそうなほど近くから写し続けた。

マライ・メントライン(独、和翻訳家・TVプロデューサー)
 LGBTQの人間的権利確保のための長きにわたる精神的苦闘を描く「政治的に正しい」装いの映画だ。実際、構成材料の99%は確かにそれ系なのだけど、残り1%で「すべてをひっくり返し、価値観を再定義」してしまう、とてもきわどい内面アート作品なのだ。なるほどカンヌで評価されるだけのことはある、と感嘆せずにいられない。

ミヤギフトシ(現代美術家)
 暗闇が隠そうとする、あるいはそこに隠れることで生まれる関係性。おぼろげな煙草の火が浮かび上がらせるのはハンスが築いた関係性であり、そこにいたかもしれない無数の誰かの消せない感情でもある。

藪前知子(東京都美術館学芸員・「山口小夜子」「石岡瑛子」展キュレーター)
 人間は自由のもたらす孤独に耐えられるのか、というエーリッヒ・フロムの問いがナイーブに思えるほど。ここに描かれるのは、自分の精神を、肉体を縛りつける空間や力から切り離しとことん守り抜こうとする、純度の高い「自由」への渇望。

 7月7日(金)、 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は更新時点のものです。資料提供:シネマNAVI )