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竹工芸 大分県立美術館

温泉地が育んだ竹の超絶技巧

生野祥雲斎「竹組 波 風炉先屛風」1954年
生野祥雲斎「竹組 波 風炉先屛風」1954年
生野祥雲斎「竹組 波 風炉先屛風」1954年 安倍基「矢筈繋文花籃 群鳥」1985年

 大分県は、竹工芸に適した真竹の日本一の産地。昔から竹を生活に利用してきました。当館でも国内屈指の内容を誇る竹細工をコレクションし、意匠を凝らした花かごやオブジェなど、約300点を所蔵しています。収集を始めたのは約40年前から。日用品が中心のため、古くなると処分されてしまいますし、超絶技巧の美しい仕事を、後世に伝えるためです。4年前に完成した当館の天井や外壁には、竹工芸の六つ目編みなどのデザインを取り入れています。

 別府の竹細工が有名で、その始まりは温泉地として発展した明治期と考えます。土産品への需要が高まり、長期滞在する湯治客は、地元農家が副業で作ったザル類を自炊に使いました。

 大正になると、茶道や華道に使う高級な竹細工を作る作家も出始めます。代表的なのが、竹工芸で初の人間国宝になった、生野祥雲斎(しょううんさい)(1904~74)です。「竹組 波 風炉先屛風(ふろさきびょうぶ)」は茶道具。地元の海を眺めて、波文様の編み目を考案しました。私も体験したことがありますが、竹は堅くて細工が本当に難しい。何本もの竹ひごを同じように曲げる技術は素晴らしく、波の動きもとても気持ちがいいですね。

 安倍基(もとし)(1942~)は祥雲斎の弟子で、その美意識を受け継ぐ作家。「矢筈繋文花籃(やはずつなぎもんはなかご) 群鳥」は、複数の編み方を使って独自の文様を作り出しています。編み方に合わせ、材料の竹ひごの厚みや幅を調整しなければいけませんし、竹も1本ずつ堅さや節目など性質が違います。どちらの作品も、創作のための長年の精進に裏打ちされています。

(聞き手・中村さやか)


 《大分県立美術館》 大分市寿町2の1(TEL097・533・4500)。午前10時~午後7時((金)(土)は8時まで。入場は30分前まで)。無休。2点は9月17日までの常設展「音に夢みる」(29日休展)で展示。300円。

友永尚子さん

学芸員 友永尚子

 ともなが・なおこ 1979年より同館(当時は大分県立芸術会館)勤務。専門は工芸。竹工芸を始め、大分の漆芸や陶芸分野を担当する。

(2018年8月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)