光や空気の移ろいを追究した仏の芸術運動・印象派。その傾向を受けつつ、あいまいな形態感覚や外観への執着を否定したのがポスト印象派です。中でも、強烈な色彩で感情や思想を表現したのがフィンセント・ファン・ゴッホ(1853~90)と、ポール・ゴーギャン(1848~1903)です。
当館の主要作品の一つがゴッホの「ひまわり」です。安田火災(現・損保ジャパン日本興亜)が、1987年、創立100周年を記念し、創立年と同時期に描かれたこの作品を購入しました。
ゴッホは、1888年2月、パリから南仏アルルへ移り住み、89年1月までに、7点の「ひまわり」を描いています。初めは、敬愛するゴーギャンをアルルに呼び寄せ、彼の部屋を「ひまわり」の絵で飾ろうと考えたようです。2人の共同生活は衝突も多く、わずか2カ月で破綻(はたん)。この作品は、その直前に描かれました。明るい黄色の背景に黄色の花、同系色を使ったコントラストが特徴。サインがないのは、この時期、ゴーギャンとの関係や技法に悩んでいた葛藤の表れでしょうか。
「アリスカンの並木路、アルル」は、ゴーギャンがアルル到着後、すぐに着手した作品。古代ローマ遺跡「アリスカン」の石棺が並んでいます。作品のキャンバス地は、ゴッホと分け合ったもの。2人の関係を感じながら鑑賞するのも楽しみの一つです。
(聞き手・秦れんな)
《東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館》 東京都新宿区西新宿1の26の1の42階。午前10時~午後6時。(月)休み((祝)(休)の場合は開館)。9月10日~21日は休館。入館料は企画展によって異なる。2点は常設展示。問い合わせは03・5777・8600。
学芸員 小林晶子 こばやし・しょうこ 西洋近代を中心とした展覧会を担当する。同館は、セザンヌやルノワールの作品も収蔵。 |