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美人画 岡田美術館

色気と品格 二つの理想

葛飾北斎「夏の朝」 1804年~13年 絹本著色
葛飾北斎「夏の朝」 1804年~13年 絹本著色
葛飾北斎「夏の朝」 1804年~13年 絹本著色 上村松園「汐くみ」(部分) 1941年 絹本著色

 美しい女性を主題にした絵画は、江戸初期の風俗画に始まり、以後浮世絵の主流となって発展しました。

 日本とアジアの文化発信を使命として2013年に開館した当館は、近世や近代の日本画、東アジアの陶磁器を中心に、常時約450点を展示しています。肉筆浮世絵はコレクションの柱の一つで、美人画も多く、近代の作品も含め25点前後を収蔵しています。

 今回はその双璧となる美人画を紹介します。江戸の浮世絵師・葛飾北斎の「夏の朝」は、水盤に泳ぐ金魚や茶わんに浮かぶ朝顔が夏らしい風情。S字に背中を反らせた女性が、鏡に顔を映しています。釣り衣桁(いこう)には男物の着物がかかり、夫が起きる前に身支度をする妻のいじらしい気持ちが伝わってくる。ひじを出し、ちらりと足首をのぞかせるなど、北斎の描く女性には色気が漂います。

 もう一点は、女性画家として明治から昭和にかけ活躍した上村松園の「汐(しお)くみ」。海女の姉妹が登場する能「松風」を画題に、姉の松風が海水をおけにくんで運ぶ様子を描いています。透明感のある色づかいで、画面が品格に満ちている。

 北斎はあでやかで現実味のある女性を描き、松園は清らかでこの世の人ではないような美女を描いた。どちらも魅力的ですが、それぞれ理想とした美しさが違うんでしょうね。

(聞き手・上江洲仁美)


 《岡田美術館》 神奈川県箱根町小涌谷493の1(TEL0460・87・3931)。午前9時~午後5時。12月31日、1月1日休み。2800円。2点は、「開館5周年記念展 美のスターたち」(9月30日~2019年3月30日)で展示する。

稲墻さん

学芸員 稲墻朋子

 いながき・ともこ 専門は、日本近世絵画史で、肉筆浮世絵を研究。日本や東洋の絵画を担当する。

(2018年9月25日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)