当館は、日本初の広告とマーケティングのミュージアムです。2002年、電通の4代目社長、吉田秀雄の生誕100周年を記念し、開館しました。江戸時代から現代までの広告資料を約30万点収蔵しています。
経営学者のピーター・ドラッカーは、マーケティングの原点が江戸時代の呉服商・三井越後屋にあると分析しました。「駿河町越後屋」は、三井越後屋が江戸後期に制作した錦絵です。本店と支店の間に美女を並べ、その年に売り出す着物を紹介しています。約50万枚刷られたといわれており、現代のファッション雑誌やSNSの口コミに通じる役割を果たしました。さらに背景に富士山を入れ、三井越後屋が日本一だということを暗に示し、企業のブランディングも行っているのです。
一方、現在は広告が社会課題を解決する役割も担うようになりました。16年にイギリスのテレビ局が制作したリオパラリンピックのCMもその一例です。イギリス人の67%が障害のある人と話すことに気詰まりを感じているというデータから、障害に対する認識を変えようと制作されました。出演者は皆障害がある人たち。ビッグバンドが演奏するジャズをバックに、パラリンピックや日常生活のワンシーンを映しています。普通にかっこいいんです。広告の本来の目的は「人の心を動かす」こと。広告を通じて得られる気づきを、みなさんと共有できたらと思います。
(聞き手・渋谷唯子)
《アドミュージアム東京》 東京都港区東新橋1の8の2(TEL03・6218・2500)。午前11時~午後6時。(日)(月)休み。入場無料。2点は常設展示。2019年3月16日まで「世界のクリエイティブがやってきた!」展を開催。
副館長 中村優子 なかむら・ゆうこ 1975年電通入社。国際局、イベントスペース局、社会貢献部などを経て、2014年より同館副館長。 |