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刑事資料 明治大学博物館

江戸の補物、取り調べの実情

伝・江戸町奉行所同心 真鍮銀流し十手 長さ30.3センチ、重さ310グラム
伝・江戸町奉行所同心 真鍮銀流し十手 長さ30.3センチ、重さ310グラム
伝・江戸町奉行所同心 真鍮銀流し十手 長さ30.3センチ、重さ310グラム 「刑罪大秘録」

 元々、法律学校として開学した明治大学。当館の刑事部門は、1929年設立の刑事博物館が前身です。刑罰関係の道具や資料を収集する目的で、学内に置かれました。現在は、商品、考古と併せて3部門で構成し、錦絵や復元した刑罰具、古文書などを収蔵しています。

 展示室に並んだギロチンや鉄の処女のレプリカに驚かれると思いますが、展示意図は別の所に。ギロチンは、おので首を切り落とすなど苦痛が大きかった処刑方法に代わって採用されたもの。人道的な改善例として紹介しています。

 「真鍮(しんちゅう)銀流し十手」は、江戸の町奉行所の同心が、巡回に使ったと伝わる十手で、身分を示す官給品です。約30センチと短く、犯人の生け捕りが目的のため攻撃性は低いですが、訓練すれば攻撃も防御も可能。刀を芯棒で受け、持ち手の上のかぎに滑り込ませてひねると、相手の刀を奪えます。比較的加工しやすい真鍮製で、外側に銀をかけています。巡回時には強度よりも美しさが優先されたのでしょうか。犯人逮捕の出役時には、約60センチの鉄製の十手を使いました。

 時代劇にはよく役人が容疑者を拷問する場面がありますが、実際はあまり行われませんでした。拷問はあくまで最終手段で、手順も細かく定められていたからです。「刑罪大秘録」は、北町奉行所与力の蜂屋新五郎親子が1814年に完成させた、取り調べのマニュアルです。縄で縛って宙づりにする「釣責(つりぜめ)」では、足を地面から三寸六分(約10センチ)ほど空ける、と規定されています。当時の司法制度は、私たちが思う以上に厳格だったのです。

(聞き手・中村さやか)


 《明治大学博物館》 東京都千代田区神田駿河台1の1(TEL03・3296・4448)。午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。冬季は12月26日~2019年1月7日休み。無料。2点は常設展示。

池田さん

学芸員 日比佳代子

 ひび・かよこ 刑事部門担当。専門は日本近世史。江戸時代の藩を対象に、民衆との関係や統治の仕組み、国替えなどを研究している。

(2018年11月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)