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仮面 国立民族学博物館

結社に加入し自ら制作

ニャウ・ヨレンバ(かぶりもの型仮面) 1989年 高さ200×横160センチ
ニャウ・ヨレンバ(かぶりもの型仮面) 1989年 
高さ200×横160センチ
ニャウ・ヨレンバ(かぶりもの型仮面) 1989年 高さ200×横160センチ (右)キフェベ・ムカシ(雌)1989年収集 (左)キフェベ・ムルメ(雄)1975年収集

 仮面とは顔を隠すものをさします。世界各地にある仮面の共通性は、森や宇宙など、人の知識が及ばない「異界」の力を可視化すること。人は仮面を身につけて踊り、「異界」と交流することで、その力を取り込もうとするのです。文化人類学、民族学を研究する当館は、20世紀後半以降に作られた世界の生活用具を中心に収集しており、仮面は大英博物館に次ぐ約6千点を所蔵しています。

 「ニャウ・ヨレンバ」は、アフリカ南部ザンビア共和国に暮らすチェワの人々の仮面結社ニャウの喪明けの儀式に登場するもので、「森からきた野生動物」とされます。儀式が終わるとすぐ火にかけられ、立ち上がる煙が空に消えたとき、死者の霊が祖先の世界に行くといわれます。燃やされるので収集できませんが、私は1985年にニャウに加入して制作方法を学び、本作を日本で作りました。トウモロコシの苞(ほう)を使い、全体を隙間なく覆うことにこだわりました。

 一方、コンゴ民主共和国に住むソンゲの人々の仮面結社キフェベの木の仮面は、立体的な造形が魅力です。森にすむ精霊とされ、大胆なしま模様で覆われ目や口、頭飾りが突き出しているのが雄。落ち着いた色合いで凹凸も少ないのが雌。世界の破壊的な側面と秩序だった側面を、雄雌一対で示しているのです。仮面単体だけでなく、儀式で踊る様子など、イメージをふくらませて見ていただければと思います。

(聞き手・上江洲仁美)


 《国立民族学博物館》 大阪府吹田市千里万博公園10の1(TEL06・6876・2151)。午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。(水)((祝)の場合は翌日)休み。本館展示は420円。3点は、本館のアフリカ展示で見られる。

吉田さん

館長 吉田憲司

 よしだ・けんじ 専門は、アフリカの造形と儀礼の研究で、35年以上ザンビア東部のチェワの村に通う。2017年から同館館長。

(2019年3月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)