当館は1995年、大日本印刷が本業に近い分野で文化活動を行う目的で、設立しました。ポスターや版画など約2万点を所蔵しています。今回の企画展では、平成の時代に作られたポスターを選び、展示しています。
「長野冬季オリンピック」は94年に青葉益輝(1939~2011)が制作した、同大会の公式ポスターです。背景の長野の山並みと、スキーのストックに止まるツグミという大小の自然の対比が、長野の自然の美しさをわかりやすく表しています。国際的なイベントのデザインではこのような秀作がある一方で、「デザインポリシーによる統制が感じられない」「地元でデザインへの関心が高まらなかった」などと論評されることもあります。美しいものを作るだけで終わらず、その後のデザインに影響を与える作品が出てくることを期待します。
「サントリー 伊右衛門」は2004年に永井一史(1961~)が制作しました。「京都」「伝統」といった商品のコンセプトを表した作品です。竹筒と、それを模してデザインしたペットボトルが並んでいます。この時期からグラフィックデザイナーの仕事の領域が広がり、商品開発やブランディングなども行うようになりました。
ポスターは大衆文化や社会に大きく関わってきたメディアです。発表当時を思い出しながら見てみてください。
(聞き手・渋谷唯子)
《CCGA現代グラフィックアートセンター》 福島県須賀川市塩田宮田1(TEL0248・79・4811)。午前10時~午後5時(入館は15分前まで)。原則(月)、5月7日休み。2点は6月9日までの「ヘイセイ・グラフィックス」展で。300円。
学芸員 森﨑陵子 もりざき・たかこ 2012年から現職。グラフィックデザインなどを文化遺産として継承することを目的としたアーカイブ事業を担当。 |