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影絵 藤城清治美術館那須高原

現実と融合したメルヘン世界

「魔法の森に燃える再生の炎」2013年
「魔法の森に燃える再生の炎」2013年
「魔法の森に燃える再生の炎」2013年 「軍艦島」2009年

 栃木県那須町に、影絵作家の父・藤城清治の美術館が開館したのは6年前。小人が現れそうな緑豊かな庭の雰囲気は、父の作品のイメージにも合っていましたし、この辺りも東日本大震災の被害に遭ったことで、「復興」も開館のきっかけのひとつになりました。現在、影絵約140点をはじめ、デッサンや資料などを常設展示しています。

 父は震災後、多くの被災地の作品を描きましたが、この幅6メートルもある「魔法の森に燃える再生の炎」は、メルヘンでありながら震災という現実を表した集大成といえる作品です。身近な存在に感じられるように地元・栃木県にちなんだ栃の木を配し、メルヘン調に描かれた魔法の炎には「幾度となく起こる災害の傷は、何年かかっても自然と人間の力で再生できる」という意味が込められているんです。

 今年で95歳になる父は、戦争の時代を生き抜いたからこそ幸福な世界を望み、「メルヘンの世界」を作り続けてきましたが、80歳になった頃、広島の「原爆ドーム」を見て決断しました。それまでは、メルヘンであるべきだと現実的なものを作ることを否定してきましたが、やはり、自分が残したいものを自分らしく作りたいと。それから描きたい、残したいと思うものを積極的に作り始めたような気がします。

 長崎市の端島(軍艦島)を描いた「軍艦島」も、廃墟の瓦礫から今なお感じるエネルギーを、「残さなくちゃけない」という思いで作った作品です。

(聞き手・白井由依子)


《藤城清治美術館那須高原》 栃木県那須町湯本203(問い合わせは0287・74・2581)。午前9時半~午後5時半(入館は1時間前まで)。(祝)(休)を除く(火)休み。1600円。

館長 藤城亜季

 ふじしろ・あき 藤城清治の娘。2013年の開館時から現職。東京と那須を行き来しながら、父・清治の制作サポートを続ける。

館長 藤城亜季さん

(2019年4月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)