当館は1990年、山階鳥類研究所の千葉県我孫子市への移転を機に、隣接して設置された、日本初の鳥の専門博物館です。当時は近くの手賀沼の汚さが問題視され、市が水質改善の指標として鳥に注目したことも開館理由です。
所蔵品は剥製を中心に約3千点。骨格標本や卵、巣も集めています。中でも本物の剥製を使った手賀沼のジオラマは目玉のひとつ。生き生きとした姿が間近で見られます。剥製の意義は「生きていた実物」ということ。世界の鳥の多様性を知る入り口になればと思っています。
トキはニッポニア・ニッポンの学名を持つ鳥ですが、日本産は2003年に絶滅しました。現在は中国産の個体を導入し、野生復帰が試みられています。
この剥製のトキは、1926年に長野県で捕獲されたもの。野生の日本産という点で、とても貴重だと思います。個人から寄託された際に、傷んだ剥製の修復を行い、現在の姿にして展示しています。
もう1点は、インド洋のモーリシャス島に17世紀まで生息し、人間が食用に乱獲して絶滅したドードー。実は完全な剥製は世界に残っていないんです。これは館が制作した復元模型で、古い絵画や文献を基にしています。ドードーはハトの近縁種と言われていますが、模型の羽毛は分類学的には遠いダチョウやクジャク、ニワトリなどで、剥製師の工夫によるもの。ドードーの体の各部位の羽毛の形や大きさに応じて、様々な羽毛が使われており、大変うまく作られています。
(聞き手・中村さやか)
《我孫子市鳥の博物館》 千葉県我孫子市高野山234の3(問い合わせは04・7185・2212)。午前9時半~午後4時半。原則(月)((祝)の場合は翌平日)休み。300円。2点は常設展示。
学芸員 小田谷嘉弥さん おだや・よしや 2013年より現職。標本の収集管理、自然観察会の運営などを担当。専門は動物生態学で、湿地性の鳥類の分類や生態を研究する。 |