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復元建造物 江戸東京たてもの園

昭和の世相を映したデザイン

  • 「武居三省堂」 1927(昭和2)年
  • 「子宝湯」 1929(昭和4)年

 当園は1993年、東京都江戸東京博物館の分館としてオープンしました。歴史的価値があり、取り壊されてしまう建築物30棟を移築・復元しています。

 「武居三省堂」は昭和初期、東京・神田の書道具店でした。間口が狭く奥行きがあり、正面はフラットで防火対策のためタイル張り。関東大震災の教訓から、燃えにくい素材で正面を覆った「看板建築」の典型です。三階建てに見えますが、当時は三階以上に居室をつくってはいけませんでした。そこで勾配が緩やかな屋根をのせ、できた空間を居室ではなく屋根裏部屋と言っていたんですね。

 武居三省堂は神田界隈に多かった細長い地所をうまく使った建物でもあります。店内片側の壁一面の棚には約350の引き出しがあり、様々な筆が収められていました。天井にはストックを置く吊り棚、陳列台に隠された階段を下ると荷ほどきをする地下室。限られた空間を有効に使う工夫が感じられます。

 対照的に「子宝湯」は堂々とした外観で、「東京型銭湯」と呼ばれています。唐破風の下の彫刻だけで家が建つほどの経費がかけられたとか。建物内部の格子状の天井は格式高い「折上げ格天井」。贅を尽くした建築が、庶民の使う銭湯というそのギャップが面白いですね。

 復元建造物は、かつて使われていた時代を再現しています。武居三省堂も子宝湯も昭和30年代の設定。墨汁などの当時の商品や柱時計などを配し、生活を感じられるようにしています。

(聞き手・小森風美)


 《江戸東京たてもの園》 東京都小金井市桜町3の7の1、都立小金井公園内(問い合わせは042・388・3300)。午前9時半~午後5時半(10月~3月は4時半まで。入園は30分前まで)。400円。(月)((祝)(休)の場合は翌日)休み。

阿部さん

あべ・ゆきひろ

 1992年、江戸東京たてもの園を管理する江戸東京歴史財団(現・都歴史文化財団)入職。主に商店建築が並ぶ東ゾーン担当。

(2019年6月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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