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唐三彩 東京国立博物館

華やかな装飾、唐文化への憧れ

唐三彩 東京国立博物館
「三彩女子」 中国 唐時代・8世紀 鈴木榮一氏寄贈
唐三彩 東京国立博物館 唐三彩 東京国立博物館

 唐三彩は唐時代の中国で、主に貴族の墓に埋葬するために作られたやきものです。緑、褐、藍色などの釉薬で装飾されているのが特徴。当館は、約100点の唐三彩を収蔵しています。

 これらは主に20世紀初頭に中国国内で行われた鉄道工事の際、発見されたものです。当時、中国では、墓に埋まっていたものは気味が悪いと見向きもされなかったと言われていますが、日本人はいち早く買い集めました。華やかな唐三彩は、唐王朝に憧れて多くを学んだ奈良時代の文化を想起させ、親近感があったのかもしれません。

 その後、山口蓬春や小林古径といった日本画家が唐三彩の収集や研究に熱中しました。当時、中国の故事や古典をもとに歴史画を描くことが流行したのですが、資料が少なかった。画家たちは、人物や動物などをかたどった中国のやきものを参考にして絵を描いたのです。

 「三彩女子」は、スカートの部分に白抜きの技法を使って花模様を表しています。髪飾りは金と朱で彩色し、顔には絵の具で化粧を施した跡も。とても写実的で、思い入れを感じます。

 土を材料とするやきものは、安価なうえ、一つの窯で時に数百も同時に作ることができる。高価な玉や金属、漆の代用として作られたのが始まりでした。「三彩貼花瓶」は金属器を写したもの。ギリシャ彫刻にも見られる植物をかたどったパルメットという文様が貼り付けられ、シルクロードを通ってもたらされた異国の文物の「遺風」が漂います。

(聞き手・伊藤めぐみ)


 《東京国立博物館》 東京都台東区上野公園13の9。午前9時半~午後5時((金)(土)は9時まで。入館は30分前まで)。620円。(月)((祝)(休)の場合は翌日)休み。2点は7月15日まで東洋館で展示。問い合わせは03・5777・8600。

みかさ・けいこ

研究員 三笠景子

 みかさ・けいこ 専門は東洋陶磁史。2006年より現職。7月15日まで開催中の「中国の青磁 蒐集と研究の軌跡」を手がける。

(2019年6月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)