ゲルマン系とラテン系の国に挟まれ、「ヨーロッパの十字路」とも呼ばれるベルギー。双方の文化が交錯する同地では、いち早く15世紀に油絵技法が確立したと言われ、美術では知られた地域でした。当館は、19世紀の象徴主義や20世紀のシュールレアリスムなど、ベルギーの近現代美術約350点を所蔵しています。
19世紀から20世紀初頭には神秘的な絵画作品が多く見られます。象徴主義のグループに属していたコンスタン・モンタルド(1862~1944)の「寓意的な情景」は精神世界を描いたもの。インスピレーションの源と言われる「霊感の泉」が左奥に見られ、静謐な雰囲気をたたえています。木の幹に塗られた金色が日本画を思わせる装飾的な作品です。縦275センチ、横415センチの大作で、もともとは暖炉をまたぐように掲げられていた壁画でした。大きすぎて持ち出しが難しいため、ぜひ館へ足を運んで見て頂きたいですね。
ベルギー象徴主義を代表する作家クノップフ(1858~1921)の「ブリュージュにて 聖ヨハネ施療院」も謎めいた作品。一度は廃れた運河の街ブリュージュが活況を取り戻した時代に描かれました。かつての寂れた雰囲気を好んだクノップフは、街を通るときはサングラスをかけ、できるだけ見ないようにしたそうです。鉛筆やパステルで描いた本作も、写実的なのに現実感がなく、どこかゴーストタウンのようです。
(聞き手・井上優子)
《姫路市立美術館》 兵庫県姫路市本町68の25(問い合わせは079・222・2288)。午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。原則(月)((祝)(休)の場合は翌日)休み。2点は9月1日まで展示。
学芸員 高瀬晴之 たかせ・はるゆき 1990年より現職。専門は西洋美術。「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」や「ベルギー近代美術の諸相」の展示などを担当。 |