一口に切り絵といっても、その定義は様々です。当館では「紙をナイフやハサミで切って創造したもの」と広い概念でとらえ、立体も含めた約30作家の約200点を所蔵しています。
この蒼山日菜さん(48)の「櫻シャンデリア」はよく「レースみたいだ」と言われますが、これも切り絵。日菜さんは20年ほど前にスイスで現地の伝統的な切り絵に出会ってから制作を始め、今では大手企業とのコラボ作品も手がけています。
特徴は、1枚の紙を1本のハサミだけで切っているところ。極細の部分も含め、すべてが切れ目なくつながっています。ナイフで切る場合は、下絵と切りたい紙の2枚を合わせて切っていくんですが、ハサミの場合は紙に直接下絵を描いて、手で持って切っていく。細かい部分がくしゃくしゃになっても、ピンセットなどで伸ばせばちゃんとひと続きになっています。近年ハサミで切り絵をする人も増えてきましたが、これだけ繊細な下絵を自ら描いて切るのは、至難の業だと思います。
一方、開館当初から展示しているのが酒井敦美さん(46)の作品。切り絵の概念を覆す驚きがあり、現在でも常設しているのは当館だけです。「出会いの種、つながりの花」は、2種類の絵柄が合わさっていて、光の当て方を変えることによって全く別の絵が浮かび上がるんです。場所と人との出会い、敦美さん自身の物語が込められています。画面がどのように転換するのか、実際に作品を見て、驚いてほしいですね。
(聞き手・白井由依子)
《富士川・切り絵の森美術館》 山梨県身延町下山1597(問い合わせは0556・62・4500)。午前9時半~午後5時半(10~3月は10時~5時。入館は30分前まで)。(水)((祝)の場合は翌日)休み。500円。
広報 笠井由美子 かさい・ゆみこ 2010年の開館時から現職。企画展などの運営全般を手がけ、地域活性化と切り絵文化の向上にも努める。 |