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数理模型 インターメディアテク

数式が描く「反自然」の造形

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 数理模型とは、数学の数式で表される領域を石膏などで立体化したもの。19世紀後半~20世紀初頭、主にドイツのマルチン・シリング社が制作し、数学の教材として用いられました。

 東大、独ゲッティンゲン大、仏アンリ・ポアンカレ研究所が最大のコレクターで、東大はほぼフルセットの200点超を所蔵しています。1910年代ごろ、東大の中川銓吉数学教授がまとめて購入したもので、ワイマール共和国のインフレに重なり、ただ同然の値段だったそう。日本郵便株式会社と東京大学総合研究博物館が協働で運営する当館では、そのほとんどをバックアップとして複製し、常時80点ほどを展示しています。

 「ディニ曲面」の幾何模型は、反るように湾曲する負の曲率曲面だけで構成される立体です。負の曲率は自然の造形には無いもので、人工物でしか表せない。初めて見た時は、イタリア未来派の画家・彫刻家ウンベルト・ボッチョーニ(1882~1916)の作品を連想しました。機械や都市の反自然を好んだ未来派と通底するものを感じます。本作はオリジナルの剥離部分もそのまま複製しています。

 34年、ポアンカレ研究所の模型を知った画家マックス・エルンストが写真家のマン・レイに撮影を依頼し、数理模型は美術的観点から再評価されました。現在はパソコン上でグラフ化した関数を3Dで動かす時代なので模型は数学的用途では使われませんが、造形物として素晴らしい。最も好きなコレクションです。

(聞き手・安達麻里子)


 《インターメディアテク》 東京都千代田区丸の内2の7の2、KITTE2・3階。午前11時~午後6時((金)(土)は8時まで)、原則(月)((祝)の場合は翌日)休み。問い合わせは03・5777・8600。

にしの・よしあき

館長 西野嘉章

 にしの・よしあき 東京大学総合研究博物館特任教授も兼任。専門は博物館工学と美術史学。2015年、仏のレジオン・ドヌール勲章を受章。

(2019年11月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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