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人形美術 飯田市川本喜八郎人形美術館

想像力かきたてる「瞬間の美」

  • 呂布は高さ約60センチ、赤兎は75センチ
  • 「死者の書」の藤原南家郎女は全身の高さ約30センチ。1秒間に静止画24コマが必要©桜映画社、川本プロダクション

 地域で文楽が伝承され、日本最大級の人形劇の祭典が行われる人形劇のまち・長野県飯田市。人形美術家・川本喜八郎(1925~2010)が「人形たちに一番ふさわしい場所」と自作の約200体を同市に寄贈、07年に当館が開館しました。現在はNHKで放送された「人形劇 三国志」(82~84年)、「人形歴史スペクタクル 平家物語」(93~95年)を中心に展示しています。

 人形のかしらは和紙や動物の革でできており、手足はゴム製で中に針金が仕込まれています。「三国志」で最初に作られたのが後漢の武将「呂布」。三国志の中でも一、二を争う豪傑で、華やかさと悲哀を併せ持つ彼の人生が展示にも表れています。馬の名は「赤兎」。1日に千里を走ったというこの名馬は董卓から呂布にわたり、その後、曹操、関羽へと引き継がれます。通常は関羽と展示することが多いため、呂布が乗る姿は珍しいのです。

 川本が世界的に評価されているのは、少しずつ人形を動かしてコマ撮りをする「人形アニメーション」です。国際映画祭での受賞が多数あり、遺作となった「死者の書」(05年制作)は奈良時代が舞台の、折口信夫による小説が原作。藤原南家郎女の表情からは純粋で一途な思いが伝わってきます。

 どの人形も能面に倣い、顔は左右非対称。人形が動くことによって、本来変わることのない表情が様々に変化したように感じます。見る側の想像力をかきたてる。それが人形の魅力なのです。

(聞き手・下島智子)


 《飯田市川本喜八郎人形美術館》 長野県飯田市本町1の2(問い合わせは0265・23・3594)。午前9時半~午後6時半。各作品は1月26日までの常設展「絆 乱世に生きた人々」で。400円。原則(水)休み。

木田敬貴さん

事務局長 木田敬貴

 きだ・たかき 2016年に同館の指定管理者「いいだ人形劇センター」事務局長就任。「ねほりんぱほりん展」など人形に特化した企画展を多数担当。

(2019年12月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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