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クリスマス飾り 日本玩具博物館

陶人形やクッキー、映す土地柄

トナラ焼のキリスト降誕人形 1980年代 メキシコ
トナラ焼のキリスト降誕人形 1980年代 メキシコ
トナラ焼のキリスト降誕人形 1980年代 メキシコ ツリー飾りのクッキー テディベアと聖ニコラウス 1980年代 ドイツ 小麦粉、スパイスなど

 1974年に開館した当館は、国内外から収集した9万点超の玩具や資料を所蔵。何度も現地に赴き、また輸入業者を通じて入手しました。そのうち約3千点がクリスマス玩具や飾り。安価な模造品が氾濫して現地でも制作されなくなり、現在は入手できない資料です。毎年この時期に関連する企画展を開きます。今年はクリスマスシーズンのカレンダーをテーマに約千点で行事を紹介しています。

 クリスマスシーズンは、11月30日に最も近い日曜日の「待降節」から始まります。12月25日のキリストの降誕に向けて準備をする期間で、24日まで続きます。この間にツリーやキリスト降誕人形を飾り始めます。メキシコの降誕人形は、伝統的なトナラ焼の陶製。埋め尽くすように描かれた動植物の模様が特徴です。中南米の国々は南欧の影響を受けており、キリスト降誕人形が盛んに飾られています。

 日本では24日や25日に贈り物をしますが、欧州では6日に行う国もあります。この日は4世紀前半の小アジア(現トルコ)・ミュラの司教ニコラウスの命日。子どもや貧しい人々を助けて物や金貨を授けたといわれ、サンタクロースのモデルとされます。ツリーの飾りは、彼をモチーフに作ったドイツのクッキー。欧州ではこうしたお菓子をツリーに飾る習慣もあります。冬も枯れない常緑樹は「永遠の命」の象徴。そこに食べ物が実っているのは豊かさのイメージだったのでしょう。装飾から、各地のクリスマスの捉え方が見えてきます。

(聞き手・渋谷唯子)


 《日本玩具博物館》 兵庫県姫路市香寺町中仁野671の3(問い合わせは079・232・4388)。午前10時~午後5時。2作品は1月19日までの「世界のクリスマス」で展示。600円。12月25日と(祝)を除く(水)、28日~1月2日休み。

井上重義さん

館長 井上重義

 いのうえ・しげよし 1939年生まれ。63年から収集を始める。74年に個人で同館設立。同館は2016年にミシュラン・グリーンガイド二つ星に認定。

(2019年12月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)