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ランプワーク KOBEとんぼ玉ミュージアム

よみがえった古代ガラス

松島巌「フェスツーン文壺」 2004年
松島巌「フェスツーン文壺」 2004年
松島巌「フェスツーン文壺」 2004年 ポール・スタンカード「Bouquet with Honeybees and Honeycomb.」 2019年

 当館は、ランプワークで作られた国内外作家のガラス作品約2千点を所蔵しています。

 ランプワークとは、バーナーでガラスを溶かして制作するガラス工芸技法のひとつで、バーナーが登場する以前はランプを用いていたことから、そう呼ばれるようになりました。

 起源は古く、約3500年~2千年前のエジプトやローマの遺跡から古代ガラスの断片やとんぼ玉が発見されています。それらを集めた国内有数の羽原明徳コレクションは、当館の常設展示の中核です。そんな古代の「コアガラス」という技法を独学で研究、試行錯誤を繰り返して復元したのが松島巌さん(73)です。この技法はコア(核)となる型を金属棒の端に作り、炎の上でガラスを溶かしながら覆って成形し、冷ましてから型を崩して取り除きます。制作に手間がかかるため、紀元前1世紀ごろに吹きガラスが普及すると廃れてしまいました。

 本作は古代の技法と現代の美を融合させた松島さんのオリジナル作品です。模様などは発掘品から着想を得たのかもしれません。松島さんが古代へはせた思いを感じますね。

 一方、現代作品で注目したいのが、ガラスの球体の中にガラスで作ったパーツを封じ込めるアートマーブルやペーパーウェート。中でも米国の作家ポール・スタンカードさんのマーブル作品は、透明なガラスの中に本物のように精巧な植物などが配され、ガラス表現の多様性を感じさせてくれます。

(聞き手・白井由依子)


 《KOBEとんぼ玉ミュージアム》 神戸市中央区京町79の2階(問い合わせは078・393・8500)。午前10時~午後7時(入館は15分前まで)。コアガラスは常設、マーブルは4月7日までの企画展で展示。400円。

館長 宮本恭庸

館長 宮本恭庸

 みやもと・きょうのぶ 2005年に私設でランプワーク専門美術館を開館。とんぼ玉をはじめとするランプワーク工芸の普及に努める。

(2020年1月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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