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イブニングドレス 神戸ファッション美術館

女性を魅力的に 衣装の最高地点

イブニングドレス 神戸ファッション美術館
クリスチャン・ディオール「ボウル・ガウン(舞踏服)」 1957年
イブニングドレス 神戸ファッション美術館 イブニングドレス 神戸ファッション美術館

 夜会服とも呼ばれるイブニングドレスは、夜間の式典や舞踏会などで女性が着る正装。19世紀前半のフランスの上流社会では、時間に合わせて衣装を着替える習慣が確立しました。輝くサテン地を使ったものが多く、首筋や肩、腕を露出して自分を魅力的に見せる、ファッションの最高地点にある衣装です。

 1997年に開館した当館は、1730年代~現代の世界各国の衣服約9千点などを所蔵。約200点あるイブニングドレスから、オートクチュール全盛期の2人のデザイナーによる作品を紹介します。

 クリスチャン・ディオール(1905~57)は、47年に「ニュールック」と呼ばれるスタイルを発表。第2次世界大戦の影響で布を節約したシンプルな服が主流だった中、細く絞ったウエストから豊かに広がるスカートなど、女性の体を強調した優雅な作風が熱狂的に支持されました。最晩年の「ボウル・ガウン」は、ラズベリー色に前身頃のギャザーがアクセント。ウエストを絞るコルセットやスカートを膨らませるパニエをドレスの内側に仕込み、服で理想的なシルエットをつくったのです。

 世界の王侯貴族に人気だったピエール・バルマン(1914~82)は、気品あるクラシックな造形美が特徴。「シャンボールの夕べ」と題されたドレスは、布地が何層も重ねられ、胸元とスカートの後ろにヤマドリの羽根がモチーフのベルベット地が縫い付けられています。長い尾が翻る様子をイメージしたのかもしれません。

(聞き手・上江洲仁美)


 《神戸ファッション美術館》 神戸市東灘区向洋町中2の9の1(問い合わせは078・858・0050)。午前10時~午後6時。2点はコレクション展(29日まで)で展示。特別展と合わせ千円。原則(月)休み。

浜田久仁雄

 学芸員 浜田久仁雄

 はまだ・くにお 開館準備段階から携わる。館蔵のマネキン約400体を手がけた。衣装が作られた当時流行したメイクも施し、人の生き方を表現する。

(2020年3月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)