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鬼面 日本の鬼の交流博物館

悪にも神にも イメージ多様

鬼面 日本の鬼の交流博物館
㊧中筋喜春「童子面」20.5×13.5センチ ㊨塩見雄一「顰(しかみ)面」21×16.2センチ
鬼面 日本の鬼の交流博物館 鬼面 日本の鬼の交流博物館

 鬼退治の伝説が複数残る、京都府北西部の大江山。そのふもとにある当館は、各地の伝承や民俗芸能などから鬼にまつわる文化を考察しようと、1993年に開館しました。絵巻や鬼瓦など約千点を所蔵しています。

 中でも鬼面は、祭りや節分、能で用いられるものなど300点余。鬼は人を脅かす悪の象徴とされる一方、福をもたらす存在として親しまれる例も。人々は鬼面に、神や悪など様々なイメージを重ねたのでしょう。

 紹介する鬼面は、いずれも大江山を舞台にした酒呑童子伝説にちなんだものです。平安期、京の都を荒らす酒呑童子という鬼を、武士たちが酒で酔わせて退治する物語。御伽草子や歌舞伎の題材にもなっています。

 能「大江山」では、酒呑童子がシテと呼ばれる主役。途中で面が変わり、内面の変化を表します。この2点とも関西の作家の作品。前半に登場する童子面は、まっすぐなまなざしが初々しく繊細な印象。後半のしかみ面は怒りで荒ぶる形相です。

 鬼は何に怒ったか。物語の終盤、酔わせてだまし討ちした武士たちを「我々は道に外れたことはしなかったのに」と非難します。一見、勅命を受けた武士の英雄譚のようですが、権力に抵抗する反逆者を鬼として征伐したという解釈も。排除されることへの憤りを感じます。

 島根県に伝わる石見神楽の面は怪物のようで、現代的なデザイン。大きい面ですが、豪快な立ち回りができるよう和紙を重ねて軽量に仕立てられています。

(聞き手・木谷恵吏)


 《日本の鬼の交流博物館》 京都府福知山市大江町仏性寺909(問い合わせは0773・56・1996)。午前9時~午後5時。3点は常設展示。330円。(祝)(休)を除く(月)、(祝)(休)の翌日、年末年始休み。4月28日~5月6日は無休。

塩見行雄

 館長 塩見行雄

 しおみ・ゆきお 福知山市職員として市史編集に携わり、2009年から現職。鬼の研究や情報発信を行う世界鬼学会の事務局長も兼任。31日で退職。

(2020年3月31日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)