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ナイジェリアの彫刻 アフリカンアートミュージアム

紀元前から デフォルメの美

ナイジェリアの彫刻 アフリカンアートミュージアム
「男性頭像」 高さ31センチ 紀元前3世紀~紀元3世紀
ナイジェリアの彫刻 アフリカンアートミュージアム ナイジェリアの彫刻 アフリカンアートミュージアム

 当館はアフリカの仮面や立像、テキスタイル、道具など、1800点を所蔵しています。民族や地域によって造形は様々ですが、古い時代の資料が比較的残っていて歴史を体系的に追えるのは、ナイジェリアを中心とするアフリカ西部です。

 テラコッタ(素焼き)の「男性頭像」は、アフリカで最も古い文化の一つ、紀元前5世紀~紀元3世紀ごろに栄えたノック文化のもの。特徴は、逆三角形に近い大きな目です。より多くのものが見えるようにという意味が込められています。アフリカの造形は精神性を重視し、デフォルメを「美」としてきました。一方で、髪の毛や歯は細かく表現され、技術の高さもうかがえます。首から下は欠損していますが、三頭身か四頭身の立像か座像だったと思われます。

 テラコッタ像が最初に発見されたのは1928年。すずの採掘が盛んだったナイジェリア中部のノック地方で、猿の頭部の像が出土しました。その後も動物や人物像が多く見つかっています。目的や用途ははっきりしていませんが、数体まとまって出てきたため、ほこらのような場所に安置していた祖先などの肖像彫刻ではないかと考えられています。

 ノック文化はその後、13~19世紀にナイジェリア南部に存在したベニン王国の文化へと受け継がれます。ベニン王国は15世紀末からポルトガルとの交易で繁栄しました。

 ベニン文化を代表する美術品は、王宮に飾られた青銅製のレリーフです。「馬に乗った王の飾り板」もその一つ。王冠をかぶった騎手は、同王国を築いたというオランミヤン王などの説があります。目の表現やプロポーションにノック文化の影響が見られます。

(聞き手・牧野祥)


 《アフリカンアートミュージアム》 山梨県北杜市長坂町中丸1712の7(問い合わせは0551・45・8111)。
 午前9時半~午後5時(入館は30分前まで)。
 頭像は9月14日まで、飾り板は9月17日~11月30日に展示。
 800円。
 (祝)を除く(火)(水)休み(7、8月は無休)。
 当面、事前予約制。

伊藤満

 館長 伊藤満

 いとう・みつる 資生堂宣伝部に勤めていた1993年、欧州でアフリカ美術と出会い、収集を始める。退職後の2010年4月に同ミュージアムを開館。

(2020年7月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)