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水の表現 軽井沢千住博美術館

「あの滝」に出会う前・20年後

水の表現 軽井沢千住博美術館
「龍神Ⅰ・Ⅱ」(部分) 2014年
水の表現 軽井沢千住博美術館 水の表現 軽井沢千住博美術館

 日本画家・千住博(1958~)の代表的なモチーフである滝。千住の作品のみ約130点を収蔵する当館で12月まで開催中の「滝・滝・滝展」では、現在の表現に至るまでの様々な滝、水を表現した作品を見ることができます。

 画家自身が「美しいところだけを切り取った」という千住の滝には、同じものはひとつとしてありません。よく知られるのが、真黒群青の背景に、白い顔料の胡粉を上から流すことで重力に従った自然な水の流れを描き出した滝。この手法で制作された作品が95年のベネチア・ビエンナーレで名誉賞を受賞、千住の滝が世界に知れ渡りました。

 それから20年たって行き着いたのが、「龍神Ⅰ・Ⅱ」です。胡粉の代わりに蛍光塗料が用いられ、暗闇で紫外線を当てると神秘的な滝が浮かび上がります。光の当て方によっては昼と夜の表情を見せ、その変化は綿密に計算されています。

 一方、平面的な水の姿を描いた「フラットウォーター」は、ニューヨークのギャラリーで93年に開いた個展で評判となり、千住博の名を世界に発信した出発点となる作品です。ハワイのキラウエア火山の溶岩が海に流れ込む光景を描いています。

 じつはこの取材中に見た滝が印象的で、以来、滝をモチーフに制作するようになったと言われています。わずか数年の間に大きく変わった千住の水の表現がとても興味深いですね。

(聞き手・白井由依子)


 《軽井沢千住博美術館》 長野県軽井沢町長倉815(問い合わせは0267・46・6565)。
 午前9時半~午後5時(入館は30分前まで)。
 2点は12月25日まで展示。
 1500円。
 9月30日までは無休、10月からは(祝)を除く(火)休み。

品川惠保

 館長 品川惠保

 しながわ・しげほ 2011年の開館時から現職。ユーキャン代表取締役会長、公益財団法人・国際文化カレッジ理事長を兼任。

(2020年7月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)