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土人形 東京おもちゃ美術館

庶民の願い映した旅土産

土人形 東京おもちゃ美術館
伏見人形「饅頭食い」 高さ12×横5・5センチ
土人形 東京おもちゃ美術館 土人形 東京おもちゃ美術館

 人間が初めて出会うアートはおもちゃであるという理念のもと、当館は世界各国のおもちゃと日本の郷土玩具を収集。現在100カ国の10万点を所蔵しています。

 土人形をはじめとする郷土玩具が流行したのは江戸時代です。庶民が旅行できるようになり、参勤交代もあった背景から、土産として作られて全国各地に広まりました。その多くが子どもの成長や、家族の健康といった願いが込められています。

 京都の伏見稲荷大社ではもともと、霊験が宿るといわれた稲荷山の土を使った土器などを参拝客が買い求めていました。1592年に伏見城が築造された後、瓦を大量に作った職人の技術をいかして生まれたのが土人形。新しい土産として参道で売られるようになった伏見人形は、全国の土人形のルーツであるといわれています。

 伏見人形の中でも人気だったのが「饅頭食い」。父母のどちらが好きかと尋ねられた子どもが、持っていた饅頭を二つに割り、どちらがおいしいかと粋に言い返したという逸話から誕生しました。賢い子どもに育ってほしいと願って買う親が多かったようです。

 福岡県福津市の津屋崎人形「ごん太」は明治時代に作られたおしゃぶり人形。当時は口に入れてもいい顔料を米粉と混ぜて色を塗っていました。現在は絵の具を使いますが、明治時代と同じ型で型どりしています。津屋崎人形は他の地域と比べて色鮮やかでポップな見た目が特徴です。今見てもかわいいと思うものが多いですね。

(聞き手・伊藤めぐみ)


 《東京おもちゃ美術館》 東京都新宿区四谷4の20(問い合わせは03・5367・9601)。
 当面は午前10時~正午と午後1時半~3時半で入れ替え、事前予約制。
 2点は2022年2月6日までの「暮らしの中のやすらぎを形づくる郷土玩具 『土人形』」で展示。
 千円。
 (木)休み。
 メンテナンスのため20年9月11日まで休館中。

施設運営部ディレクター 貝原亜理沙

 施設運営部ディレクター 貝原亜理沙

 かいはら・ありさ 複製画の制作、絵画造形教室の講師などを経て、2017年から勤務。同館のおもちゃ工房と企画展示室の企画運営を担当。

(2020年9月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)