1926年に柳宗悦らが創始した民芸運動は古作や無名の手仕事を愛好する面が注目されがちですが、その美しさを制作に採り入れ新しいものを生み出そうとする美術運動でもあります。
70年の大阪万博のパビリオン「日本民芸館」でも、江戸期の工芸品のほかに、濱田庄司の大鉢や棟方志功による木版画の大作などが披露されました。当館はパビリオンの建物を受け継いで72年に開館、民芸の新作を都度収集してきました。今回は、柳や濱田とつながる作家から影響を受け、その精神を受け継いだ現役作家を紹介します。
宮城県在住の鈴木照雄(72)は、地元でとれる土にこだわり、登り窯で作陶に励まれています。この大皿は、近くで見ると地肌は粗くざらざらしています。皿のふちに釉薬を回し掛け、重力にまかせて中心に向かってどろりと流れた模様。原始的な力強さと、作家の意思が調和したような作品です。
鳥取を拠点とする山下健(65)は、和紙の世界から、染色の道に進みました。絣は、縦横の糸をくくり、染め分けた糸を織ることで模様を出します。型染めなどとは違い、かすれた境界に味わいがあります。
素材の持ち味と、焼成や防染などの工程を経て生まれるコントロールしきれない偶然性の美。作家たちは自身の感性に従いつつも、そのように伸びやかな美しさが作品に宿ることを願っているのではないでしょうか。そこには、自然への信頼と敬愛が感じられますね。
(聞き手・井上優子)
《大阪日本民芸館》 大阪府吹田市千里万博公園10の5(問い合わせは06・6877・1971)。
午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。
2点は「民藝の軌跡 ポストEXPO’70の作家達」で展示中(12月13日まで)。
710円。
(水)休み。
学芸員 小野絢子 おの・じゅんこ 2013年から現職。今夏の特別展「民藝(みんげい)の力 パビリオン『日本民藝館』とEXPO’70」などを担当。 |