1978年開館の当館は、和菓子を中心に日本の菓子文化全般について資料を収集、展示しています。
寺社が多く茶道が盛んで菓子の需要が高かった京都。菓子文化が発展した背景には原材料となる丹波の小豆、近江の米、徳島の和三盆を得やすく、水温・水質が通年で安定した地下水が豊富だったこともありました。
砂糖の輸入が増えた江戸中期には白砂糖をつかった高級な上菓子が誕生。地方にも伝わり、「京菓子」の名でブランド化したようです。
江戸後期の上菓子の図案集「御用 新装 御菓子之絵図」は、菓子店「虎屋近江大掾」が得意先から注文を受けるため作ったものです。
上菓子は花鳥風月や古典文学を題材にとることが多く、意匠や名前の由来に思いをはせて楽しめるのが特徴ですが、直接的な表現を好みません。抽象的な色・形で想像をかき立てるとともに、茶席の主役であるお茶を引き立て、様々な場所で重用されてきました。
図案を見て気づくのは、江戸期も現在も上菓子の見た目はあまり違いがないことです。斬新さより伝統が好まれる京都らしいといえます。
一方、菓子の中身は現代の志向に合わせて、あんこの炊き方などが工夫されています。
明治期に博覧会出品のため、糖菓子の技術を応用して作られ始めたのが糖芸菓子です。題材を細部まで観察し、生命力まで表現できるように葉や花びらの一枚一枚を手作りします。
難度が高く、制作に時間を要することから、糖芸菓子職人は少なくなりましたが、後継者を育てながらつくり続けています。
(聞き手・鈴木麻純、写真も)
《京菓子資料館》 京都市上京区烏丸通上立売上ル(問い合わせは075・432・3101)。
午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。
無料(お茶席は700円)。
(水)(木)休み。
学芸員 成岡あゆみ なりおか・あゆみ 資料館を運営する京菓子の老舗「俵屋吉富」に2009年に入社、17年から現職。企画展「諸国菓子めぐり」などを担当。 |