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野外彫刻 彫刻の森美術館

自分と向き合い 空に開けた穴

  • 野外彫刻 彫刻の森美術館
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 1969年に開館した当館は、自然豊かな箱根の眺望をいかした野外美術館です。彫刻家井上武吉(1930~97)が本館と庭園の設計を担当しました。

 井上はその後、東西冷戦下の西ベルリンに渡り、5年間滞在します。制作スタイルが定まらず、突破口を見いだせない閉塞感と、壁に囲まれた現地の情勢。それらが重なった状況で見つけ出したのが「マイ・スカイ・ホール」、つまり天をのぞく穴です。壁に穴を開けたら、その先に自由や希望があるのではないかと考えたのです。

 帰国後に最初に制作したのが当館の「天をのぞく穴」です。鑑賞者は黒い鉄の箱に入り階段で地下へ。小部屋の天井に開いた小さな穴から空を見上げた後、ガラスの箱から地上へ出ます。暗く落ち込んだところから、明るい世界へ出て行く。自分と向き合うための装置のような作品です。地下通路の壁はゴム製のひだのような形状で産道を想起させ、母親の胎内を通って生まれ変わる旅とも言えるでしょう。これ以降、井上は同じテーマで制作を続けました。

 「my sky hole 84 HAKONE」は、真下から見ると直径約1・7メートルの球体に風景が映り込み、空にうがたれた穴のよう。見る人が必ず中心になる、まさに自分だけの「穴」です。井上の出身地、奈良県旧室生村は山深い場所。見上げると高い木立の上の方に空があったのが原風景だそうです。いくつになっても、子どもに戻りたがっている人だったのでしょう。

(聞き手・伊藤めぐみ)


 《彫刻の森美術館》 神奈川県箱根町二ノ平1121(問い合わせは0460・82・1161)。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。1600円。

くろこうち・たくろう

主任学芸員 黒河内卓郎

 くろこうち・たくろう 専門は近現代の彫刻。個展「山本基 しろきもりへ」「大巻伸嗣 存在の証明」などを手がけた。

(2021年1月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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