江戸後期、京都では円山応挙や四条通周辺に住んだ呉春らが写実的な描写を新たに取り入れ、「円山四条派」として注目されます。その流れをくみ、画塾や画学校などで学び、展覧会で競い合う画家の中から竹内栖鳳、上村松園らが頭角を現します。当館は彼ら「京都画壇」の日本画を軸に、洋画や工芸などを季節ごとに展示しています。
木島櫻谷の「寒月」は、日暮れの鞍馬で残雪に残る足跡を見て着想。雪原を歩く動物としてキツネが絵になると思ったのでしょうか。京都市動物園に通ってキツネの写生を重ねました。
竹の根元のリズミカルな高低差や動きに富んだ枝ぶり、緑の濃淡が画面に奥行きを与えています。足跡からするとキツネは左隻の左側から来たようです。日本画で左から右への移動が描かれるときは、過去の時間が意識されています。この絵でもキツネがもやのかかった「どこか遠く」から目の前に現れるまでのイメージがふくらみます。
「平牀」は竹内栖鳳に学んだ土田麦僊が朝鮮の妓生をモデルにした作品です。寝台(平牀)の水平線と、女性2人の頭と鏡を結んだ斜線が成す三角形の構図と、衣服の曲線が際立ちます。残された素描をたどると、座る女性の立てひざは徐々に低く、色鮮やかな衣装も白が基調になり、朝鮮らしさは薄まりました。異邦への憧れが見える一方、昭和初期という時代背景も考えさせる作品です。
(聞き手・山田愛)
《京都市京セラ美術館》 京都市左京区岡崎円勝寺町124(問い合わせは075・771・4334)。午前10時~午後6時(入館は30分前まで)。2点は3月14日まで展示。730円。祝を除く月休み。
中谷至宏 なかたに・よしひろ 奈良生まれ。1987年から勤務。2020年度コレクション展を担当。近代京都の博物館施設史、展覧会史を研究。 |