朝日遺跡(名古屋市西区、愛知県清須市)は東西約1・4キロ南北約0・8キロ、山と海両方にネットワークを持ち、人、物、情報が集まって栄えた弥生時代の集落と考えられます。周囲に堀が巡らされ、防御施設の痕跡が見つかったことでも知られています。
昭和40年代からの発掘調査で膨大な量の出土品が見つかりました。長い年月地下水につかっていたため保存状態が非常によいのが特徴で、2千点以上が国の重要文化財に指定されています。これらの保管・公開施設として、当館は2020年11月に開館しました。
ぽっかりと丸い穴が開いた「円窓付土器」は朝日遺跡で最も多く出土しています。火にかけた痕跡などはなく用途は不明ですが、生活域と墓の境で同時に複数が見つかることが多いことから、儀式のための供えものを入れたとも考えられます。穴は握り拳が入るぐらいで、中のものが見えるようにした可能性もあるし、ものを入れたり出したりすることに意味があったという想像もできるでしょう。
いずれにしてもこの集落は日本列島の東と西の境に位置していて、西の大陸的な文化と東の伝統的なものとが合わさって、独特の発想が生まれたのだと思います。
様々な材質の石器も見つかります。近畿のサヌカイトでつくられた剣や北陸のヒスイを用いた勾玉など、他地域との交流・交易を物語る出土品も多く見られます。へりの部分に植物を切断した際にできる光沢があり、この痕跡から稲わらの刈り取りなどに使われたとわかる石器もあります。
(聞き手・三品智子)
《あいち朝日遺跡ミュージアム》 愛知県清須市朝日貝塚1(問い合わせは052・409・1467)。午前9時半~午後5時。300円。原則(月)休み。
学芸課長 原田幹 はらだ・もとき 金沢大学大学院修了。博士(文学)。愛知県で遺跡の調査研究に従事。開館の準備段階から携わる。専門は考古学。石器の使用痕を研究 |