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モエレ沼公園

大地に残した 空から見る彫刻

モエレ沼公園
「テトラマウンド」 1996年完成 高さ13×幅65×奥行き56.2メートル、マウンドの高さ4.7メートル  写真提供:モエレ沼公園
モエレ沼公園 モエレ沼公園

 約189ヘクタールの広大な敷地に人工の山や噴水などが点在する当園は、日米にルーツがある彫刻家イサム・ノグチ(1904~88)が最晩年に基本設計を手掛けました。

 ノグチは若い頃から自身のアートを世の中に役立てたいと公共公園の造成を模索、実現の可能性を求めて88年に初めて札幌を訪れます。歓迎した市は作品制作を依頼し、その設置候補地の一つが、ごみ処理場として埋め立て中で、すでに公園造成が始まっていたモエレ沼だったのです。

 搬入されたごみが舞い散る中を、83歳とは思えない早足でくまなく視察したノグチは「人間が傷つけた土地をアートで再生するのが僕の仕事」と話し、公園全体を白紙から設計したいと希望します。

 約半年で仕上げたプランは、空から見て「全体を一つの彫刻作品」として考えた、ノグチの集大成といえるものでした。しかし最終案を発表した1カ月後にノグチは急死。公園は遺志に基づき忠実に造られ、その後17年をかけて完成しました。

 「テトラマウンド」は、芝生の丘を中央に、ステンレスの円柱を組んだモニュメントです。丘の上に登ると公園の拠点施設「ガラスのピラミッド」や三角形の二つの山が一望できます。高さは13メートルと4階建てぐらいありますから、予想外のスケールに驚く人も。公園の全体において全てが壮大で、実施設計時には「本当にこの大きさでいいのか」という声がたびたび上がったといいます。

 「プレイスカルプチャー」は、約1800本のサクラが植えられたエリアにある126基の遊具の一つ。素材は下水管の曲管なんですよ。もののフォルムを用途から離れて見る、美しさの本質をいつも考えていたノグチらしい作品です。

(聞き手・斉藤由夏)


 《モエレ沼公園》 札幌市東区モエレ沼公園1の1(問い合わせは011・790・1231)。午前7時~午後10時(入園は1時間前まで)。無休。

みやい・かずみ

学芸員 宮井和美

 みやい・かずみ 2003年から現職。現代美術を専門とし、展覧会の企画を多数担当するほか、公園の広報活動にも携わる。

(2021年7月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)