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ジョージ ナカシマ記念館

木の生命力 伝統技術で輝かす

ジョージ ナカシマ記念館
「アサノハ フロアランプ」(左) 幅61×奥行き61×高さ152センチ/「アサノハ テーブルランプ」 41.5×41.5×73.5センチ いずれもヒノキ(笠部)とブラックウォルナット(脚部) 1990年製作
ジョージ ナカシマ記念館 ジョージ ナカシマ記念館

日系米国人2世の家具作家ジョージ・ナカシマ(1905~90)の作品約60点を所蔵、展示する当館は、ナカシマの家具を唯一ライセンス生産する桜製作所(高松市)が2008年に設立しました。

 米シアトル育ちのナカシマは建築家として日本やインドで活動しましたが、完成に多くの人が関わる建築を離れ、一人ですべてを統合できる家具の製作を志したとされています。日米開戦後の強制収容所生活で日系人大工から木工技術を学び、その後米東部に工房を構えました。

 「アサノハランプ」の笠は、日本の伝統的な文様で、ナカシマお気に入りの麻の葉がモチーフです。ヒノキ材の色が明るい印象の笠部分と比べて、シンプルな土台部分は深みのあるブラックウォルナット材で、コントラストが際立っています。

 戦後の1964年に再び来日したナカシマは、釘を使わず木材を組み合わせるなど日本の伝統技術を気に入り、作品に採り入れました。このランプの笠も障子の組子の技術で作られ、現在も製作は全て高松市の伝統工芸士に依頼しています。

 「ミングレンデスク」は、建築や工芸の作り手らが新たな価値創造をめざして高松で結成した「讃岐民具連」の名を冠したシリーズの一つです。中心人物の一人、彫刻家の故・流政之氏を通じてナカシマも民具連に参加しました。

 家具材には本来、木目のまっすぐな板がよいとされますが、ナカシマは木の声を聞き、割れや傷、節にこそ歴史や生命力を感じると、通常ならば捨ててしまうような木材も美しく木取りし、作品に生かしました。割れや節が目立つ部分には「ちぎり」と呼ばれる伝統的な補強を施し、割れ止めや、2枚の板の繋ぎとしています。表から見えない部分に使う技法ですが、デザインのアクセントにもしています。

 ナカシマは日本の「渋い」という美意識に関心を寄せました。英語では表現が難しいですが、本人は「品のある」と説明しています。

(聞き手・高田倫子)


 《ジョージ ナカシマ記念館 高松市牟礼町大町1132の1(問い合わせは087・870・1020)。午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。550円。ランプは東京・銀座の桜製作所直営店にも展示。日曜祝日と年末年始休み。臨時休館中。

ながみ・こうすけ

館長 永見宏介

 ながみ・こうすけ 2015年から現職。1982年から1年間、米ペンシルベニア州ニューホープのジョージ・ナカシマの工房で学ぶ。96年から桜製作所代表取締役社長。

(2021年8月31日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)