1982年設立の当館は、大阪市が住友グループから寄贈された「安宅コレクション」の中国・韓国陶磁を中心に、東洋陶磁約5700件を収蔵しています。
「白磁 壺」は、朝鮮白磁の中でも純白磁と呼ばれるものです。純度の高い白土に鉄分を含まない透明釉薬をかけ、1200度以上の高温で焼成。「雪のような白」と表現されます。
高麗時代は青磁が好まれたのですが、続く朝鮮王朝時代は白磁の本格的な制作が始まります。儒教思想にふさわしい清潔で簡素な磁器として重んじられ、「王の器」とされました。
本作のような胴体の丸い大つぼは韓国では「満月壺(タルハンアリ)」と呼ばれます。胴を上下二つに分けて作り、つなぎ合わせて焼成する技法で作られています。焼成時のゆがみのためか、角度を変えると違った形に見え、一つで壺10個を持っているようだとも形容されます。
もとは志賀直哉が所有し、親交のあった奈良・東大寺の上司海雲師に寄贈。95年、侵入した泥棒に粉々に壊されてしまいました。破片を集めて当館に寄贈された後、修復・復元されるという、数奇な運命をたどった壺でもあります。
「青花 蓮池文 角皿」は、コバルト顔料で模様を描いた白磁です。分厚い板状の台の四隅と中央に、雲形の切れ込みが入った脚が付いています。先祖を祭る儀式などで供物を置くのに使われた祭器とみられますが、この形にはあまり類例がありません。池に咲くハスを中心にした文様は一幅の絵画のようです。
(聞き手・高田倫子)
《大阪市立東洋陶磁美術館》 大阪市北区中之島1の1の26(問い合わせは06・6223・0055)。午前9時半~午後5時(入館は30分前まで)。1400円。2点は来年2月6日まで展示予定。月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始、展示替え期間休み。
主任学芸員 鄭銀珍 ジョン・ウンジン 立命館大大学院修了(文学博士)、2008年から同館勤務。専門は東洋陶磁史。著作に「韓国陶磁史の誕生と古陶磁ブーム」(思文閣出版)。 |
大阪市立東洋陶磁美術館