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安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄

季節に映える存在感 憩いの場に

安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄
「水の広場」 1997年開設 白大理石(写真は夏の様子)=小川重雄氏撮影
安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄 安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄

 かつて石炭の町として栄えた美唄。当館は閉校した小学校を再生させた施設です。美唄出身で北イタリアを拠点にする彫刻家・安田侃(1945~)の作品およそ40点を木造校舎、旧体育館、約7万平方メートルの敷地内に展示しています。

 校舎と旧体育館(写真左)の間の「水の広場」は、白大理石の彫刻「天聖」(右奥)、石舞台に立つ「天モク」(中央)、小道のような流れ、円形の池からなります。

 小道に敷き詰められた玉石は石切り場のふもとの川にあったもの。水がいろいろな角度からぶつかるため幅の広い心地いい流水音が聞こえます。夏には子供たちが水場で遊び、大人は木陰で休む光景がしばしば見られました。

 代表作の一つ「妙夢」はブロンズ製のものが東京ミッドタウン(東京都港区)に、白い大理石製のものが札幌駅にありますが、周りの環境によって見え方が異なります。

 イタリアで展示した際、ある女性が安田さんに作品の意味を尋ねたといいます。「夢の扉」と答えたところ、「夢は穴のこちら側? それとも向こう側?」。「あなたはどちらだと思いますか」と問い返すと「こちら側ね。だから私が老いているのも夢よ」と笑ったそうです。

 冬、あたりが一面真っ白になると、ブロンズの黒さが一層際立ちます。自然と彫刻の調和が最も豊かな表情を見せる季節かもしれません。

 展示には作品名も解説もつけていません。気に入った場所があればそこでゆっくり時間を過ごしてもいいし、自然の中を散策しながら彫刻作品と出会ってほしいです。

(聞き手・伊東哉子)


 《安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄》 北海道美唄市落合町栄町(電話0126・63・3137)。[前]9時~[後]5時。無料。[火]、[祝]の翌日([日]除く)、12月31日~1月3日休み。

いずみ・さき

学芸員 泉沙希

 いずみ・さき 札幌市出身。2011年から現職。学芸業務のほか広報、グッズ企画などを担当。22年の30周年に向けて、企画展を構想中。

(2021年12月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)