愛知県犬山市で毎年4月に行われる犬山祭ではからくり人形をのせた車山と呼ばれる台車が13台練り歩きます(2020、21年は中止)。当館はこうした祭礼からくりや、茶運び人形のような座敷からくりを展示・実演しています。
「からす天狗」は祭礼からくりの構造を参考にした創作からくり人形です。作者の玉屋庄兵衛の家は愛知県ではただ一軒の伝統的なからくり師で、江戸期から約300年続いています。
高下駄をはいた人形が階段状に並ぶ杭の上を歩いて渡ります。動きの秘密は、筒状の杭の下から差し入れる「差し金」という長い棒。高下駄の中の掛け金を掛けたり外したりすると、歯車で接続するもう片方の足にも動力が伝わり歩くように見える仕組みです。
人形は最上段まで来ると背中の羽を広げ、天狗の面をかぶります。一連の動作の操作は7人がかり。制作と同様、操作にも精巧な技術が必要です。
人が操る祭礼からくりに対し、ゼンマイばねを使う座敷からくりの一つ、「二筆文字書き人形」は愛知県安城市の古民家で発見されました。明治時代に出産祝いとして贈られたもので動かなくなっていましたが、玉屋さんが解体せずに構造を解明、約1年かけて複製しました。
背後の糸におもりを下げると台の下の歯車や糸を通じて力が伝わり、人形の首や腕が動きます。右手で「松」、口にくわえた筆で「竹」と書き、紙を置いた画板に描かれた梅と合わせて「松竹梅」。腕を広げ、お客さんに披露するという趣向です。
(聞き手・鈴木麻純)
《IMASEN犬山からくりミュージアム》 愛知県犬山市犬山北古券8(問い合わせは0568・61・3932)。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。300円。展示替え期間中休み。
犬山祭保存会専務理事 溝口正成 みぞぐち・まさなり 2017年から現職。九代玉屋庄兵衛後援会理事を兼務し、犬山祭やからくり人形の保存や情報発信に努める。 |