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茅野市尖石縄文考古館

大きな「ビーナス」と小さな「姫」

茅野市尖石縄文考古館
国宝「土偶」(縄文のビーナス) 縄文中期(約5千年前)
茅野市尖石縄文考古館 茅野市尖石縄文考古館

 長野県茅野市には237カ所の縄文時代の遺跡があります。その一つ、棚畑遺跡から1986年に出土した国宝「土偶」は、「縄文のビーナス」の愛称で知られます。

 土偶の多くは10~15センチほどで、手足がなかったりバラバラな状態だったりします。病気やけがの治癒を願って身代わりに使われたためともいわれます。これに対し縄文のビーナスは27センチと大型で、ほぼ完全な状態で見つかっており、違う目的で作られたのかもしれません。

 しっかりしたおしりと足を持つ「出尻(でっちり)土偶」で、おなかは臨月の女性のよう。土偶のほとんどは女性か妊婦を表現していると言われますが、このようにはっきりした例は珍しいです。つり目、とがった鼻とおちょぼ口の顔だちは、棚畑遺跡がある八ケ岳山麓(さんろく)で出土するほかの土偶にも見られます。

 頭頂部が平らで渦巻き文のある頭はかぶりものを着けている、髪を結っているなど諸説あります。表面は光沢があり、首から胸元は角度によって金色に光って見えます。土に雲母が混ざっているためですが、写真ではわかりにくいのでぜひ実物を見ていただきたいです。

 同じ遺跡から出土された通称「おやゆび姫」は高さ4・6センチ。手足の表現はなく、「目と口」または「胸とへそ」とも見える三つの穴が特徴です。小型なので、個人の所有物として持ち歩かれたものかもしれませんね。

(聞き手・高木彩情)


 《茅野市尖石縄文考古館》 長野県茅野市豊平4734の132(問い合わせは0266・76・2270)。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。500円。原則(月)((祝)の場合は翌平日)休み。

もろずみ・ゆか

学芸員 両角優花

 もろずみ・ゆか 2019年から現職。大学時代は戦中戦後の日韓史を専攻。縄文のビーナスの雲母には「キラキラしたラメが好きな現代女性に通ずるものを感じる」。

(2022年3月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)