戦前、ガラスの薬瓶が盛んに製造されていた富山市は、教育文化・産業振興の柱に「ガラスの街」を掲げます。
2015年に開館した当館は1950年代以降の現代グラスアートを中心に400点超を所蔵。近年はガラス以外の素材と組み合わせたインスタレーションも増えており、身近なガラスとはまた違った姿に驚かされます。
佐々木類の「植物の記憶」は、市などが主催する国際公募展「富山ガラス大賞展2021」で大賞を受賞、現在コレクション展で展示中です。
一見平面的な画面には、真っ白な灰になった植物が並びます。作家自ら採集した草花を2枚の板ガラスで挟み、焼成して仕上げました。フレームに設置したLEDライトに照らされ、花びらの重なりや葉脈、植物から発生した気泡まで繊細に浮き上がります。
海外から帰国した時に抱いた「日本に対する懐かしさの欠如」をきっかけに取り組んだという佐々木。植物を記憶の象徴、ガラスを「保存のための素材」と捉えた独自の視点が評価されました。
「トヤマ・フロート・ボート」は当館のために作られた常設作品です。浮き玉をイメージした吹きガラスの「フロート」は、手のひらサイズから抱えるほどの大きさまで117個。地元の神通川で漁に使われていた木造のささ舟と合わせ、豊かなガラスの色彩が展示台に映り込む様子は幻想的です。
デイル・チフーリは60年代アメリカでおこった「スタジオ・グラス運動」を代表する作家の一人。チームによる制作スタイルで、大規模な作品を手がけています。この作品も95個のフロートを市内の「富山ガラス工房」で共同制作。富山で開発された色ガラスも採用されています。
(聞き手・渡辺鮎美)
《富山市ガラス美術館》 富山市西町5の1(電話076・461・3100)。
(前)9時半~(後)6時((金)(土)は8時まで。入場は30分前まで)。200円(企画展を除く)。原則第1・3(水)、年末年始休み。
学芸員 西田真 にしだ・しん 1993年生まれ。北海道大学大学院修了。2019年から現職。開催中のコレクション展「グラスアート:三つのフローラ」(11月13日まで)を担当。 |
富山市ガラス美術館