「民芸」を新しい美の概念として普及させた柳宗悦の収集品を中心に1万7千点以上の工芸品を所蔵する当館。現在は柳が計4回訪れた沖縄で収集した品を中心に「沖縄の美」(8月21日まで)を展覧しています。
「芭蕉(ば・しょう)木綿白地手花(てぃ・ばな)手巾(てぃ・さーじ)」は、一見すると手ぬぐいのようですが、女性から兄弟や思い人に渡され、大切に身につけられたお守りのような存在です。
背景には、女性には特別な霊力があり、舟で漁に出る男性たちの守り神となる「オナリ神」信仰があります。女性は家族や恋人への思いを込め、衣服用の布を織った後に残った経糸(たて・いと)を利用して、かすりや「手花」という縫い取り織りで手巾を織りました。
絵柄の合わせ方には作り手の個性が出ています。どの家にも織り機があり、織ることが女性のたしなみだった時代だからこそ成り立っていた文化かもしれません。
「水色地遠山に落雁(らく・がん)文様紅型(びん・がた)衣裳(い・しょう)」は、琉球王国時代に王族・士族が着用していた衣装で、型紙を使って染められています。描かれているのは、秋の空から舞い降りる雁ですが、沖縄では雁は見られません。紅型の柄には身近な風物ばかりでなく、本土のものも多く取り入れられていました。鮮やかながら清涼感のある色合いには沖縄らしさがあり、同時に、手仕事ならではの温かみを感じます。
展覧会では柳の3回目の沖縄訪問時に撮影された映像も上映しています。柳は沖縄の風物や豊かな自然など見るもの全ての美しさに感動の毎日を送りました。歓喜のかたまりのような、その気持ちを展示からお伝えしたいです。
(聞き手・伊東哉子)
《日本民芸館》 東京都目黒区駒場4の3の33(問い合わせは03・3467・4527)。[前]10時~[後]5時(入場は30分前まで)。2点は8月21日まで展示。1200円。[月]([祝]の場合は翌日)休み。
学芸員 古屋真弓 ふるや・まゆみ 2015年から現職。広報や教育普及、国際関係を担当。企画展「藍染(あい・ぞめ)の絞り 片野元彦の仕事」(19年)、「アイヌの美しき手仕事」(20年)などを担当。 |