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妖精の森ガラス美術館

ウランが発光 皇帝を魅了

妖精の森ガラス美術館
「ロシア皇帝のゴブレット」 ロシア 1880年代 高さ約15センチ
妖精の森ガラス美術館 妖精の森ガラス美術館

 当館がある岡山県鏡野町の人形峠ではかつて天然ウランが採掘されました。採掘終了後、新しい地域特産品として「ウランガラス」開発計画が持ち上がり、当館は2006年に制作と展示の拠点としてオープンしました。

 着色剤として微量のウランを混ぜたウランガラスは1830年代にボヘミア(チェコ)で生産が始まりました。明るい黄色みを帯び、強い紫外線を当てると緑色に発光する美しさが人気を呼び、欧州各国や米国に広まりました。日本でも大正から昭和初期に食器や酒器などが作られました。

 「ロシア皇帝のゴブレット(脚付杯)」はウランガラスの素地全面にエナメル彩で植物の模様が描かれています。8脚のうち2脚の底にはロシア帝国の国章と当時のロシアで最大だったクリスタル工場の名が刻印されています。

 ロシアではウランガラス発明から間もない1850年ごろ、皇帝が製造技術や原料をボヘミアやフランスから輸入し、国内の工場で製造させたことがわかっています。紫外線ライトが一般的でなかった当時はこれほどの緑色が見られる機会は少なかったはずですが、緑がかっていく色みの変化を楽しんでいたのではないでしょうか。

 現代の作品「杯」は、日本を代表するガラス作家の内田守と当館工房スタッフの日浦佑記の共同で、約2カ月かけて制作されました。確かなカット技術によって光が杯の内側で乱反射し、特有の緑色がより美しく幻想的な表情を見せます。

 ウランというと「怖いもの」という印象がありますが、ウランガラスに含まれるウランはごく微量です。日常生活に用いても問題ありません。

(聞き手・片野美羽)


 《妖精の森ガラス美術館》 岡山県鏡野町上斎原666の5(問い合わせは0868・44・7888)。午前9時半~午後5時(入館は30分前まで)。500円。原則(火)、年末年始休み。

みうら・ひとし

学芸員兼工房スタッフ 三浦和 さん

 みうら・ひとし 倉敷芸術科学大で吹きガラスと出会う。千葉県、静岡県のガラス工房勤務を経て2017年から現職。

妖精の森ガラス美術館

https://fairywood.jp/

(2022年9月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)