「神話のふるさと」といわれる出雲。出雲大社に隣接する当館は古代以来出雲に伝わる文化財や資料を保存、展示、活用しています。
中央ロビーに鎮座する「宇豆柱」は2000年から出雲大社境内で行われた発掘調査で発見されたもので、過去にあった神殿の前面中央を支えていたと考えられます。
柱はほかに2カ所から出土し、いずれも直径約1・3メートルの杉材が3本組みにされています。素材の科学的分析や一緒に出土した土器の年代などから、鎌倉時代の1248年に造営された本殿のものと推定されました。
出雲大社にはかつて高さ約48メートルにもなる巨大な神殿があったといわれ、宮司家にはその設計図と考えられる「金輪御造営差図」が伝わりますが、規模が大きすぎて真偽が問われていました。ところが見つかった巨大柱は差図に残された柱と規模、構造、配置に共通点があり、設計図通りの神殿が実在した信憑性が高まりました。
巨大柱の発見後、鎌倉時代の本殿の復元模型を作成し、館内に展示しています。依頼した5人の専門家によって高さや形など違いが見られます。
現出雲市内の荒神谷遺跡では1984年、古代史を揺るがす発見がありました。弥生時代の銅剣358本が4列にぎっしり並べられた状態で見つかったのです。その数は、それまで全国で見つかった銅剣の総数を上回りました。
さらに翌年、銅矛16本と銅鐸6個が出土。1カ所から3種が見つかったのは初めてで、それまで「銅鐸の近畿」と「銅剣・銅矛の北九州」の2大文化圏論が有力だった弥生時代像が覆るきっかけとなりました。
(聞き手・栗原琴江)
《島根県立古代出雲歴史博物館》島根県出雲市大社町杵築東99の4(問い合わせは0853・53・8600)。午前9時~午後6時(11月~2月は5時まで。入館は30分前まで)。2点は常設展示。620円。第3(火)休み。
専門学芸員 是田敦
これだ・あつし 2021年から現職。古代から平安時代の出雲を研究。人の行き来に注目した「出雲と都を結ぶ道 古代山陰道」などを企画。 |
島根県立古代出雲歴史博物館