今年創業100年の江崎グリコが1972年に開館した当館。会社や製品、広告の歴史などを紹介する中で、一番の人気が「おもちゃ(おまけ)」です。これまでつくった約3万種から約4千点を並べています。
当社の歴史は、カキの煮汁から抽出した栄養成分グリコーゲンを練り込んだキャラメルに始まります。創業者・江崎利一の理念は「子どもの天職は食べることと遊ぶこと」というもの。おもちゃも菓子同様に大事で、「おまけ」ではないのです。
大正時代の発売時、絵入りカードだったおもちゃは間もなく現在につながる豆玩具になりました。戦後の欠乏期はクレヨンや消しゴムといった実用品が喜ばれました。70年ごろからは男の子用に乗り物やコマ、女の子用はままごと道具や人形と、よりリアル、おしゃれになりました。
写真左は87年から約260種を手がけたデザイナー、加藤裕三(1950~2001)によるものです。
木彫作家で幼稚園の遊具などもデザインした加藤は、年代や性別を問わず一緒に遊べるようにと生き物を多くモチーフとしました。動物園に通ってスケッチをしながら構想を練り、試作品は木でつくりました。製品はプラスチックですが丸みを帯び、大人も子どもも思わず手にとりたくなる魅力があります。
カニは足の代わりに車輪がつき、横歩きではなく前進します。トンボは土台をつつくとその場で羽ばたくよう。アシカは前後に揺らすと鼻先の玉で曲芸をするように見えます。
写真右のおもちゃがつくられた50年代は、従来のブリキや紙に加え色鮮やかなセルロイドなどが使われるようになりました。オート三輪や車、飛行機、家電など豊かな生活へのあこがれがかいま見えます。
(聞き手・鈴木麻純)
《江崎記念館》 大阪市西淀川区歌島4の6の5(問い合わせは06・6477・8257)。午前10時~午後4時(60分入れ替え制、前日までに要予約)。無料。(日)(祝)、第1、3以外の(土)、1月と5月の第1(土)、お盆、12月29日~1月4日休み。
館長 石橋達二 いしばし・たつじ 1990年江崎グリコに入社。商品開発などに携わり、2018年から現職。 |