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福岡市博物館

黒田家伝来 信長からの褒美

刀 名物「圧切長谷部」 南北朝時代 刃長64・8センチ 国宝 撮影:要史康
刀 名物「圧切長谷部」 南北朝時代 刃長64・8センチ 国宝 撮影:要史康
刀 名物「圧切長谷部」 南北朝時代 刃長64・8センチ 国宝 撮影:要史康 大身鎗 名物「日本号」 室町時代 総長321・5センチ、刃長79・2センチ (上は全体、中は螺鈿が施された柄、下は剣先をのみ込もうとする龍が彫られた倶利伽羅〈くりから〉文の彫刻)

当館が所蔵する国宝3件はいずれも旧福岡藩主・黒田家伝来の資料です。その一つ、刀 名物「圧切長谷部(へし・きり・は・せ・べ)」は1575年、黒田官兵衛(孝高(よし・たか))が織田信長に中国攻めを献策した際、褒美として与えられたとされるものです。

 このとき官兵衛は播磨(兵庫県)の一豪族の家臣にすぎませんでしたが、2年後に始まった織田軍の中国攻めでは一躍、歴史の表舞台に登場します。この刀は信長に才能を認められた証しの品といえるでしょう。

 信長の手元にあった頃、無礼を働き膳棚に隠れた茶坊主を成敗するため、棚の下に刀を差し込み押し当てただけでスッと切れたといわれ、「圧切」と呼ばれます。大太刀を短く仕立て直しているため当初の銘はありませんが、山城(京都府)の刀工、長谷部国重の代表作として国宝に指定されています。

 刀の見どころは姿、地肌、刃文(は・もん)(刀身に見られる波模様)です。この刀は身幅が広く切先が大きい豪壮な姿ですが、特に、刃先だけではなく刀身全体に焼きが散らばった皆焼(ひた・つら)という刃文が見事です。

 名鎗(めい・そう)「日本号」は「黒田節」にうたわれるエピソードで知られます。黒田二十四騎の一人、母里太兵衛が福島正則から無理強いされた大杯の酒を飲み干し、もらい受けたという伝承です。柄に施された螺鈿(ら・でん)が持ち手の部分ではがれ落ち、穂(刀身部分)にも敵の刃(やいば)を受け止めた傷が3カ所ついており、実戦で使われたことが分かります。

 近年、「圧切長谷部」など著名な刀剣を擬人化したゲームの影響で、女性の来館者が急増しました。刀の魅力が最大限伝わるように、照明などを工夫しています。写真では分からない鍛錬の妙など、ぜひ実物でじっくりご覧下さい。

(聞き手・田中沙織)


 《福岡市博物館》 福岡市早良区百道浜3の1の1(問い合わせは092・845・5011)。午前9時半~午後5時半(入館は30分前まで)。「日本号」は常設展示、「圧切長谷部」は2月5日まで展示中。200円。原則(月)休み。

ほりもと・かずしげ

学芸課 主任学芸主事(歴史・中世担当)堀本一繁

 ほりもと・かずしげ 1967年生まれ。専門は日本中世史。古文書や黒田家に伝わった刀剣、甲冑(かっちゅう)などを担当。

福岡市博物館 公式ホームページ

http://museum.city.fukuoka.jp/

(2023年1月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)