西日本最大級の鉄道博物館である当館は、蒸気機関車から新幹線まで54両もの鉄道車両を保有、展示しています。
「230形233号機」は国産初の量産型蒸気機関車で、1902(明治35)年から09年までに41両造られたうちの1両です。英国製を手本とし、石炭と水を積み込むスペースが機関車本体と一体になったタンク式。2016年に国の重要文化財に指定されました。
日本の鉄道の歴史は1872年に始まりますが、当初は英国から技術を導入し、車両やレールも輸入に頼っていました。輸送需要の増加を背景に鉄道路線が全国に拡大する中、国産で初めて量産型を製造したのが230形を製造した汽車製造という民間会社です。
233号機は中国、四国地方で客車や貨車を牽引、最後は兵庫県の国鉄高砂工場で入れ換え用に使われました。引退後、片隅に置かれていましたが、1967年から大阪市の交通科学館(後の交通科学博物館、2014年閉館)で展示、当館には16年の開館にあわせて移されました。
製造から120年、そんな年月を経た機関車がピカピカに保存されていること自体、すばらしいと思います。
「SLスチーム号」は営業運転をしていた本物の蒸気機関車が牽引する客車に乗れる体験展示です。写真のC56形160号機は後ろに炭水車を連結したテンダー式。テンダー式は後方視界が悪く通常はバックができませんが、C56形は炭水車の側面を切り欠いて視界を確保し、バックも可能です。
このほか特急「つばめ」に使われたC62形2号機などが、交代で往復1キロほどの専用線路を運行しています。春は桜、秋は紅葉を楽しみながら音や香り、蒸気など実際の感覚を通してSLを体験できます。
(聞き手・栗原琴江)
《京都鉄道博物館》 京都市下京区観喜寺町(問い合わせは0570・080・462)。午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。1200円(3月1日から1500円)。SLスチーム号は300円。(水)休み。
館長・前田昌裕 まえだ・まさひろ 1982年日本国有鉄道入社。JR西日本鉄道本部運輸部次長、安全推進部担当部長などを経て2021年から現職。 |
京都鉄道博物館HP