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群馬県立歴史博物館

強大な被葬者 大陸と交流?

「胡座を組み合掌する男子」 高さ114センチ 文化庁保管
「胡座を組み合掌する男子」 高さ114センチ 文化庁保管
「胡座を組み合掌する男子」 高さ114センチ 文化庁保管 「金銅鈴付大帯」 長さ105×幅9.4センチ×厚さ0.05~0.07ミリ 文化庁保管

 6世紀後半に築造された群馬県高崎市の綿貫観音山古墳は長さ約97㍍、同時期で最大級の前方後円墳です。約1400年の間盗掘に遭わず、被葬者の権力を物語る埴輪群や副葬品が巨大な横穴式石室から大量に出土。2020年に国宝に指定され、古墳の南約1㌔にある当館で常設展示しています。

 「胡座を組み合掌する男子」は石室の入り口付近から出土した人物埴輪群の一つです。つば付き帽子に下げ美豆良と呼ばれる髪形、耳輪や首飾りを着け、腰には鈴付きの大帯。装束やポーズに細やかな造形表現が見られます。

 椅子に座る高貴な女子と向かい合い、弦楽器を奏でる童女や武人を従えていました。こうした構成は儀式を再現していると考えられ、その主役であるこの埴輪は被葬者(王)の生前、最も栄光ある場面での姿を表すと思われます。

 埴輪が身につけたものと共通すると考えられる「金銅鈴付大帯」は、石室内から腰に巻いたように輪になった形で見つかりました。金銅大帯の出土は奈良県藤ノ木古墳など全国に3件しかなく、中でも鈴付きはこれだけです。

 ほぼ等間隔に20個が銀の鎖でつるされた金銅の鈴は、魔よけや権威を示す意味があったとされます。

 6世紀後半は全国的には前方後円墳の衰退期にあたりますが、群馬県を含む関東では大規模な前方後円墳が盛んに造られました。墳丘を取り巻く多種多数の埴輪樹立も関東では最盛期にあり、綿貫観音山古墳はその代表例です。

 副葬品には獣帯鏡や銅水瓶など中国や朝鮮半島の遺物と類似点の多いものが数多く含まれます。被葬者は政権の外交政策に関わり、東アジアと交流する立場にあったと考えられます。

(聞き手・島貫 柚子)


 《群馬県立歴史博物館》 群馬県高崎市綿貫町992の1(問い合わせは027・346・5522)。[前]9時半~[後]5時(入館は30分前まで)。常設展300円。原則(月)休み。

 「国宝展示 綿貫観音山古墳の世界」
  https://grekisi.pref.gunma.jp/event/710/

いいだ・ひろみつ

前学芸員・飯田 浩光

 いいだ・ひろみつ 岡山大学大学院文学研究科修士課程修了。専門は考古学。2015年~23年3月勤務。

(2023年5月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)