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水木しげる記念館

鬼太郎の誕生、4パターンの原画

水木プロダクション提供

 漫画界の巨匠、水木しげる(1922~2015)の作品と人生模様を伝える鳥取・境港の記念館。4月20日にリニューアルしたばかりの最新展示が、大勢の人を引きつけています。
 「鬼太郎の誕生―生まれかわる四つの物語―」と題した企画展を、来年4月にかけて開催中です(前期は10月20日まで)。映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」のヒットも記憶に新しいですが、鬼太郎には変遷があります。人類が地球上に生まれる前からすんでいた幽霊族の最後の生き残りで、死んだ父親は心配のあまり目玉だけの姿になって見守るーーこんなストーリーをベースに1960年から媒体を変えつつ4パターンの誕生物語を描き直しました。
 貸本漫画2作品と「月刊漫画ガロ」「少年マガジン」の原画を披露。近年の映像作品とは違い、おどろおどろしい画風です。描きこまれた背景は精細な仕上がりで、カラー作品は染め粉を使った味わい深い色合いです。
 水木は陸軍の一兵卒として太平洋戦争の激戦地ラバウル(パプアニューギニア)に出征。左腕を失いましたが、「百死に一生を得る」というほどの惨状から奇跡的に生還しました。体験をもとにした「総員玉砕せよ!」など戦記漫画もよく知られています。
 「水木しげると戦争」とする常設コーナーもつくられました。ひときわ年季を感じさせる展示は、愛読書「ゲーテとの対話」。出征前に生と死について思いを巡らせるようになり、文豪に心酔した心情をしのばせます。「家宝」とメモが加えられた英和辞典もあわせ、戦地に持っていきました。
 「目に見えない世界には国境はないです」といった名言を伝える「水木しげるの言葉」というコーナーも設けられました。おもしろくてちょっとコワイ43体が潜む「妖怪洞窟」もあり、多彩な館となっています。

(聞き手・木元健二)

 


 《水木しげる記念館》鳥取県境港市本町5(電話0859・42・2171)。[前]9時半~[後]5時(入館は30分前まで)。千円。無休。

 

あさくら・ゆみ

学芸員・坂本茜さん

さかもと・あかね 2000年奈良県出身、立命館大学大学院文学研究科博士前期課程修了。24年から現職。専門は日本現代史。