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福田美術館

もふもふ 愛らしさ写実的に

「竹に狗子図」円山応挙 192×55センチ(左右共通)1779年 掛け軸
「竹に狗子図」円山応挙 192×55センチ(左右共通)1779年 掛け軸
「竹に狗子図」円山応挙 192×55センチ(左右共通)1779年 掛け軸 「乳虎渡渓図」大橋翠石 207×62センチ 20世紀 掛け軸

 

 江戸時代から近代にかけての日本画をメインに約2千点のコレクションを所蔵しています。京都の嵯峨嵐山という立地柄か、観光客の方も多く来館されます。

「竹に狗子図」は江戸時代中期から後期に活躍した画家の円山応挙(1733~95)の作品です。当時は「狩野派」という、ある程度絵の型が決まっている流派が流行しており、応挙もそこで学んだと言われています。その後、写実的な絵を描く第一人者となっていきます。今は写真が当たり前にある時代ですが、当時の人は応挙が描く、写真のようにリアルな絵を見て驚いたのではないでしょうか。

 描かれている犬は紀州犬だろうと言われています。子犬の、もふもふとした体や、きゅるんとした目は、今見ても可愛いですよね。江戸時代の人もこの絵を見て可愛いと思っていたのだな、その感覚は時代を経ても変わらないのだな、と思います。

 竹と犬の組み合わせは「一笑図」とも呼ばれ、人気の画題だったようです。線も単純で色もあまり使っていないのに、しっかりと伝わる。応挙の画力があってこそですね。

 「乳虎渡渓図」は明治から昭和にかけて活躍した画家、大橋翠石(1865~1945)の作品です。母虎が子虎を口にくわえて川を渡ろうとする姿が描かれています。親虎の緊張しているような表情とは対照的に子虎はきょとんとして見えます。勇猛なだけでなく、動物への温かいまなざしが伝わる優しい作品だと思います。

 その状況自体は見たことがなくても、その時代に手に入るもの、目に見えるものをよく観察し、写実的な絵に仕上げたと考えられる点は両者に共通していますね。

(聞き手・斉藤梨佳)


 《福田美術館》京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3の16(☎075・863・0606)。【前】10時~【後】5時(入館は30分前まで)。1500円。2点は8月26日まで「福田どうぶつえん」で展示中。展覧会自体は10月1日まで。臨時休館あり。

 福田美術館
 https://fukuda-art-museum.jp/

 「福田どうぶつえん」
 https://fukuda-art-museum.jp/exhibition/202403153420

 

館長・川畑光佐さん

館長・川畑光佐さん

 かわばた・みさ 京都府出身。立命館大学法学部卒業。2019年から現職。

(2024年7月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)